ウィザーズ社公式サイトより、アラーラの断片プレビュー。
青に近い緑の白騎士
By Mike Flores
Translated by YONEMURA "Pao" Kaoru
マット・プレイスが、ワシントン州レントンにおいて皆さんの好きなゲームをデザインし開発するカードタップ極秘部隊のメンバーだということは皆さんご存じの事でしょう。ラヴニカ・ブロックのブースター・ドラフトでプロ・プレイヤーたちが2色のバウンス土地を色があわなくてもピックするようになるよりずっと前に、マットは《乾燥高原》をドラフトでピックしていたのです。そして現在、マジック開発部のメンバーとして、彼は土地の開発に取り組んでいました。しかし、彼がこの愛すべきゲームを作っている闇の組織の一員になる前、彼は傑出したプロツアー・プレイヤーであり、ロチェスター・ドラフトのプロツアーで優勝したことすらあるのです。しかしそれよりもさらに前、彼は彼は自分の土地を傑出した形で操っていました。
私は、この話を忘れたことはありません。その記事は古いデュエリスト誌に掲載されていました。「Top Decks」の連載前、それどころか「Swimming
with Sharks」の連載開始よりもまだ前、そもそもmagicthegathering.comが存在しなかったほど昔の話です。そのトップ・プレイヤーは、彼の土地はもちろんのこと、他のプレイヤーの土地までも思うままに操っていたのです。
問題のカードは当時の聖三位一体をなす要素のひとつでした。「史上最強のドロー・エンジン」である《ネクロポーテンス》と肩を並べる唯一のカード──もちろん、あのカード、《土地税》のことです。《土地税》のおかげであまたの夢のような勝利が生み出され、また、《土地税》はあまたの逆転劇の中心になりました(対戦相手にとっては悪夢以外の何ものでもなかったでしょうが)。そのカードが制限カードになったときには、私たちプレイヤーは嘆き悲しんだものでした。このように、マットはタイミングを支配することに秀でていました。私たちが『スタック』というコンセプトにたどり着くよりも3年か4年前の話です。
マットと対戦相手が同数の土地を場に出しており、マットの土地のうち1枚は《露天鉱床》でした。マットは《露天鉱床》を使い、相手の不幸な土地(確か《ミシュラの工廠》でした)を狙います。それに対応して、マットは《土地税》をスタックに置きます(当時はスタックという呼び名ではありませんでしたし、現在のルールでは《土地税》を使ってもそういうことはできません。そのためには《税収》が必要です)。マットの《土地税》が解決され……て、この時点ではマットの土地は1枚少ないのです! 《露天鉱床》は既に生贄に捧げられていますが、能力は解決されていないので相手の土地は場に残っています。マットはうまうまと土地を引いてきて、それから《露天鉱床》の能力を解決して、1対1になるところを何と4対1交換にしてしまったのでした。
それほど、《土地税》は凄まじいカードだったのです!
1マナではありえない強さを誇っていたこのカードは武勇伝の主役にもなっていましたが、本質的に不公平なカードであり、そして対戦相手にとって不快なカードでした。とはいえ、アイデア自体は悪くないということで、開発部は長年にわたって、壊れていない白の《土地税》を作ろうと努力してきたのです。
中でも有名なのは、前述した《税収》でしょう。《税収》は1回限りの《土地税》でしたが、マナ・コストが安かったため多くのデッキに入りました。また、平地絡みの二重土地との相性もよかったのです。他の《土地税》の末裔は、(条件つきではありますが、土地破壊対策のサイドボードには入っていた)《しもべの誓い》から(条件は少なかったものの、それ以上にコストが高かった)《終わり無き地平線》まで使われるものもあれば使われないものもありました。しかし、今まで──アラーラの断片の前まで──開発部は、《土地税》をクリーチャーに載せようとはしませんでした。
これはスゴイ試みですよ。
このクリーチャーはどう見てもバントです。《白蘭の騎士》は、白を中心とした青白緑の断片に存在するクリーチャーです(他のブロックだと《トリーヴァの廃墟》の色ですね)。新しい名前に馴染んでいなくても、文章欄の機微から断片を見わけることができます。
まず、《白蘭の騎士》は、《白騎士》から始まる系譜の新人であり、特に傑出している《銀騎士》や《メドウグレインの騎士》はトーナメントで大活躍しています。これらの でプレイできる2/2先制攻撃クリーチャーは、何人もの国別王者と、少なくともひとりの世界王者、思い出せるだけでも何人ものグランプリ覇者を生み出すことができているのです。この《白蘭の騎士》を見れば、白蘭の花開く2/2の土壌を認められるのではないでしょうか。
一見すると単発型の《税収》効果に見えるこのカードの基本的なメカニズムは、《土地税》のせいで勘違いしがちですが、実際はもともと緑のものです。
どうです? 緑には、特定の種類の土地を探して来て直接場に出すという3マナの系譜があるのです。
最近──第10版のリストとか──開発部は、このモデルに多様性を持たせる事にしました。《ヤヴィマヤの農夫》のエコーなしはどうだろう? 《ウッド・エルフ》のサイズを倍にしてみたら? その結果、《護民官の道探し》が生まれました。
《ウッド・エルフ》のサイズを倍にして、《ヤヴィマヤの農夫》の弱点を取り除いて、その代わりに土地は場に出るんじゃなくて手札に入るようになりました。ええ、《護民官の道探し》はいいクリーチャーですよ!
実際のところ、この流れは緑のクリーチャーが期待できる最善の流れで来ています。《ウッド・エルフ》は森勝洋の世界選手権獲りの一助となりましたし、《護民官の道探し》はチャールス・ジンディがプロツアー・ハリウッドを制したデッキの中核でした。それらはトップ・プレイヤーのデッキを構成していたわけです。
《白蘭の騎士》は緑の連中のように『自動的に』カード・アドバンテージを取れるわけではありませんが、緑と比べて33%安いマナでプレイできます。そして、緑の連中と1対1で対峙したら一方的に殺戮できるのです。緑のクリーチャーより三分の一安いだけですが、実際上は半分と言っても過言ではありません(最初の手札に土地が2枚あって、もう1枚引くかどうかに賭けて開始したあと引かなかったことを想像してみてください)。この観点から言って、構築環境への影響は見逃せません。
1)《白蘭の騎士》は『後手』を帳消しにします。相手が先手だったとして、第3ターン、向こうには3枚土地が出ているでしょう。あなたは場に2枚土地が出ている状態で《白蘭の騎士》をプレイ、その能力で土地を出して、それから通常の土地を出す。これであなたのほうが土地が多い状態になりました。次の第4ターンには5枚目の土地を出せる可能性もあるのです。
2)《白蘭の騎士》で出てくる土地はアンタップ状態ですから、さらにそのマナを使っての選択肢が広がるのは明白です。例えばもう1枚の2/2《今田家の猟犬、勇丸》を出してみたりもできますし、上のような状況ならさらに2マナ・クリーチャーを出すこともできるでしょう。
3)《白蘭の騎士》は最適なプレイを推奨します(長期戦になるとそういった細かな差異が意味を持ちます)。《イラクサの歩哨》がアンタップ状態のときに緑の呪文を使ってしまって、あとで起こせなくて困っているプレイヤーとかいるでしょう(他の緑の呪文を使うことで解決できますけどね)? 《白蘭の騎士》はそのようなプレイヤーを罰します。《白蘭の騎士》をプレイする前に土地を『思わず』プレイしてしまったら、カード・アドバンテージを得ることができなくなります。この優秀なクリーチャーが、《白騎士》《銀騎士》《メドウグレインの騎士》《印章持ちの聖騎士》などの下位互換になってしまうのです。
カード・アドバンテージとマナ加速を手にできない時に《白蘭の騎士》をプレイするな、という話ではありません。ジョン・フィンケルは、対戦相手が『印鑑』を出せていなくても(それしか2マナ・クリーチャーがいなければ)《ブリキ通りの悪党》をプレイするべきだと言ってきます。要はケースバイケース、状況に応じて考えなければなりません。ビジョンズ時代、『狂える天才』(今や開発部の一員ですが)と呼ばれたエリック・ラウアーは《税収》で2対1交換をすることに取り憑かれ、カードを得るために短期的なマナ効率を犠牲にすることがありました。このカードを使っているほとんどのデッキは白ウィニーで、2マナには12枚ぐらいのカードがあるはずです。選択肢はあるのです。
一方で、《白蘭の騎士》がソル・マルカのデッキのようなコントロール系デッキに入らない理由はありません。サイドボードのカードとしては、《白蘭の騎士》はチャピンの《黒き剣の継承者コーラシュ》デッキにおける《火山の鎚》のようなものと計算できます。場違いに見えますが、相手のデッキの動きに応じて投入すれば抜群の効力を発揮するのです。《白蘭の騎士》は戦闘を留める効果もあり、相手のビートダウンの動きを遅くすることもできます。そして、コントロール系デッキに一番必要なこと──カードを引くこと!──も、できるのですから。
さて、今回の記事のタイトル「青に近い緑の白騎士」というのは、そういうことです。『白騎士』はもちろんあの《白騎士》です。『緑』はそう判りにくくもないでしょう(このクリーチャーは《白騎士》のコストとサイズを持った《ウッド・エルフ》なんですから)。『青』というのは? 《白蘭の騎士》がバントそのものだというのはどういうことでしょう? よく冗談で言うのは、この青のカードが最高だということです。《白蘭の騎士》は、《白騎士》とはかなり違います。以前は、《メドウグレインの騎士》が最高だと思っていましたが、今や《白蘭の騎士》が最高です。《白蘭の騎士》は、一見白に見える能力を使って緑系を強めたものです。この強め方は史上稀に見るものです。これは《大クラゲ》や《熟考漂い》などのようなカードに見られる能力で、3マナや5マナのカードの持ち物です。しかし、「それだけでゲームに勝てる」という能力を持たずにただ1枚の土地を出すだけの緑とは違い、《白蘭の騎士》はコストに比して充分な戦闘力を持っています。
青。皮肉? 他に何があります?
私はこの《白蘭の騎士》にはキスキン全盛の今の白ウィニーを塗り替える力があると思っています。このクリーチャーはキスキンではなく、人間・騎士で、《ひなびた小村》《ゴールドメドウの重鎮》《皺だらけの主》各4積みのデッキとのシナジーはありません。しかし、それでもなお、このカードは充分に強く、そのようなデッキに割り込んだり、あるいは全く新しいデッキを作り上げる能力を持っています。スタンダードやブロック構築はもちろん、それよりも広い形式においてもです! |