シャドウムーアでは、混成カードがラヴニカ以来に復活しました。

 例えば赤緑の混成カードなら、{R}{G}、どちらのマナでも支払うことができます。赤単でも、緑単でも使えるというわけです。

 今回紹介するのはその混成カードの一つ《魔力変》です。

 2マナ使って2マナを出すカードになんの意味が?

 実際、このカードをプレイしても場に影響はほとんどあたえません。もし手札に何もなければ、このカードは2点のマナバーンを受けるだけの呪文なのです。そういった意味では、《暗黒の儀式》と似たカードという印象を受けます。《暗黒の儀式》は2マナを生み出す代わりに手札を1枚失いますが、この《魔力変》はマナを「変換」するだけで、手札は減りません。そのかわり、マナが増えるわけではないので、1ターン目に《惑乱の死霊》のような爆発力はありません。

 しかし、色マナの安定という役割ならどうでしょう?

 マジックには「色拘束」という概念があります。

 点数で見たマナ・コストが同じもので比較した場合、{1}{U}《ルーンのほつれ》より{U}{U}《対抗呪文》{2}{U}{U}《まごつき》より{1}{U}{U}{U}《謎めいた命令》といったように、色マナのシンボルが多いほうがカードパワーは高い傾向にあります。

 色拘束のきついカードは多色デッキでは使いにくい。

 例えば青白のコントロールで《謎めいた命令》《神の怒り》を使う場合、4ターン目までに両方をプレイできるようにするためには{U}{U}{U}{W}{W}が必要ということになります。

 しかし、《平地》《島》の基本地形からだけでは4つの土地から5つの色マナを出すことはできません。

  そこで、特殊地形や《極楽鳥》・ラヴニカの印鑑シリーズなどによって多色をサポートするというわけです。

 10版のダメージランドは、単色デッキで使うとただ1点ダメージをくらうだけの痛い土地です。しかし、多色デッキでは、必要な色マナが出ない「色事故」を防止できるので、昔からよく使用されてきました。

 マジックのリソースの中で、最も重要なものはマナだと僕は考えています。

 序盤はマナが無ければ何もできず、その序盤の攻防はゲーム全体に影響を及ぼします。デッキを組んだなら、デッキのすべてのカードが使えるようにしなければいけません。極端な言い方をすれば、プレイできないカードは手札に無いのと同じです。そのためには、マナベースの安定はとても重要なことです。手札に《神の怒り》を抱えながら、二枚目の白マナソースを引けずに負けてしまった、という経験は誰にでもあるでしょう。

 この《魔力変》というカードは、マナベースの安定という用途では優れたカードです。好きな組み合わせのマナが出るので、2色のデッキよりも、土地バランスの難しい3色以上の多色デッキで活躍できるでしょう。3色以上の、例えば《稲妻の天使》や、《包囲の搭、ドラン》など、カードパワーは非常に高いものの色拘束がきつく、プレイしにくいカード。これらを使うときは、土地から多くのダメージを受けたり、そもそも色拘束のせいでプレイすることができなかったりと、さまざまな弊害がありましたが、《魔力変》潤滑油となってくれるのです。

 しかし、ラヴニカのギルドランド、印鑑、バウンスランドがローテーション落ちした現在では3色以上のデッキを組むのは難しく、スタンダードを席巻しているのは単色または2色デッキであり、そういったデッキはダメージランドや部族ランドによりマナベースがしっかりとしているため、《魔力変》のような潤滑剤は必要なくなってしまいます。

 それなら、他にどのような使い道が?

 《魔力変》は手札を減らさずにマナを「変換」します。考え方によっては、0マナのキャントリップ呪文として捉えることもできます。

 そのターン中に生み出した2マナを使いきれるのなら、《魔力変》はライフの減らない《通りの悪霊》になるというわけです。そして、「呪文」でもある・・・・

 勘のいい人ならピンと来たかもしれません。そう、ストーム。《魔力変》なら、手札もマナも減らすことなく、「このターンプレイした呪文」を一つ増やすことができるのです。

三原 槙人の「青赤ドラゴンストーム」
世界選手権2006 / 優勝


8《島》
4《山》
4《蒸気孔》
4《シヴの浅瀬》
1《石灰の池》
1《戦慄艦の浅瀬》
-土地(22)-

4《ボガーダンのヘルカイト》
2《狩り立てられたドラゴン》


-クリーチャー(6)-
4《ドラゴンの嵐》
4《炎の儀式》
4《煮えたぎる歌》
4《差し戻し》
4《万の眠り》
4《手練》
4《時間の把握》
4《睡蓮の花》
-呪文(32)-
1《石灰の池》
2《戦慄艦の浅瀬》
1《計略縛り》
3《紅蓮地獄》
3《無知の喜び》
4《撤廃》
1《ザルファーの魔道士、テフェリー》
-サイドボード(15)-

Patrick Chapinの「赤単ドラゴンストーム」
世界選手権2007 / 準優勝

12《山》
4《菌類の到達地》
4《溶鉄の金屑場》
4《背骨岩の小山》
-土地(24)-

4《ボガーダンのヘルカイト》


-クリーチャー(4)-
4《ドラゴンの嵐》
4《ぶどう弾》
4《火葬》
3《紅蓮術士の刈り痕》
3《裂け目の稲妻》
4《炎の儀式》
4《ショック》
2《タール火》
4《睡蓮の花》
-呪文(32)-
2《古えの遺恨》
4《十二足獣》
2《巣穴からの総出》
2《記憶の点火》
3《硫黄破》
2《命運の輪》
-サイドボード(15)-

 ともに2006年・2007年の世界選手権を賑わせたデッキです。二つとも、《ドラゴンの嵐》をキーカードとしていて、マナ加速呪文によりストーム数を稼ぎ、決まれば一撃で20点以上のダメージを与えます。

 《魔力変》は、手札を減らすことなくストーム数を稼ぐことができる。ということはつまり

《巣穴からの総出》ならゴブリントークン二体

《ぶどう弾》なら一点火力

《火山の目覚め》なら《石の雨》
 に相当するということです。そして《ドラゴンの嵐》なら、《ボガーダンのヘルカイト》になります。たった2マナの呪文で、8マナのドラゴンを呼び出せるなんて!

 さらに、スタンダードにこだわらないならば、ストームの選択肢はもっと広がります。

 

The Extended Perfect Storm


3《宝石の洞窟》
3《地熱の割れ目》
2《用水路》
4《硫黄孔》
4《ほくちの加工場》
-土地(16)-


-クリーチャー(0)-
4《燃え立つ願い》
4《陰謀団の儀式》
3《太陽との交感》
4《彩色の宝球》
4《彩色の星》
2《金属モックス》
4《睡蓮の花》
3《精神の願望》
3《深遠の覗き見》
3《暗黒への突入》
4《炎の儀式》
4《煮えたぎる歌》
2《苦悶の触手》
-呪文(44)-
 エクステンデッドの《精神の願望》デッキです。大量のマナ加速カードによってストームを稼ぎ出し、《精神の願望》《苦悶の触手》でそのターンのうちにゲームに勝利します。

 大量マナを生み出すことだけに特化していて、土地も通常より多くマナを出すためにインヴェイジョンの2マナランドが入っています。マナを出すためのカードとフィニッシュ手段という、シンプルながら美しいデッキです。

 しかし、このデッキはマナ加速に特化するあまり《陰謀団の儀式》《煮えたぎる歌》など、特定の色のマナがでやすい反面、必要な色マナ(特に{U}{U})が出にくくなっています。上のデッキでは《彩色の宝球》《彩色の星》で変換しているのですが、コンボを決めに行くためにプレイ→起動すると1マナ減ってしまう、かといって決める前のターンに先出しすると今度はストーム数が減ってしまう、そんなジレンマがあります。

 《魔力変》はそんなジレンマを解消してくれます。好きな組み合わせのマナが出るというのはこのデッキにとっては重要ですし、コンボの準備である《燃え立つ願い》《暗黒への突入》も土地を生贄にせずに使えます。しかも{R}{G}どちらかのマナひとつだけでよいので、プレイできない状況は滅多に無いでしょう。

 《精神の願望》デッキにはピッタリで、痒いところに手が届く感じです。むしろこのデッキのために《魔力変》がデザインされたのではないかと考えてしまいます。

 もう一つ、ストームデッキといえば、レガシーの2ランドベルチャーが有名です。

Two Land Belcher


2《Taiga》
-土地(2)-

4《Elvish Spirit Guide》
4《猿人の指導霊》
4《野生の朗詠者》
4《ほくちの壁》


-クリーチャー(16)-
4《金属モックス》
4《炎の儀式》
4《捨て身の儀式》
4《煮えたぎる歌》
4《ライオンの瞳のダイアモンド》
4《水蓮の花びら》
4《土地譲渡》
4《燃え立つ願い》
4《ゴブリンの放火砲》
3《巣穴からの総出》
2《紅蓮破》
1《赤霊破》
-呪文(42)-
3《否定の契約》
1《赤霊破》
1《落盤》
1《巣穴からの総出》
1《先細りの収益》
1《苦悶の触手》
1《冥府の教示者》
4《破壊放題》
1《簡略化》
1《思考囲い》
-サイドボード(15)-
 極端に土地を切り詰めて《ゴブリンの放火砲》で一撃必殺を狙う、レガシーならではのデッキです。たまに7枚目くらいに土地がめくれて不発弾になってしまったりとエンターテイメント性に溢れる、僕の好きなデッキです。

 実はこのデッキ、《精神の願望》よりもさらにマナ加速に特化しているためストームを稼ぐことにも優れていて、《ゴブリンの放火砲》以外の勝ち筋として《巣穴からの総出》を用います。1ターン目に10体のゴブリントークンを並べて、そのまま2回攻撃して勝ち、なんてこともよくあります。

 サイドボードに入っている《先細りの収益》はコンボに届かないときの手札補充、《苦悶の触手》はフィニッシュ手段として、どちらも有用なカードです。しかし、赤緑の二色デッキのため、今までは《ライオンの瞳のダイアモンド》を引いた場合にしかプレイできないという欠点がありました。その欠点を、《魔力変》が解決します。都合よいことに赤緑ですし。何度も言うようですが、ストームも稼げます!

 この記事が出る頃には、もうシャドームーアの全貌も明らかになり、皆新しいデッキを模索していることと思います。

 新しいカードに触れ、それをどんな風に使うか考える。マジックの醍醐味のひとつです。

 僕も《魔力変》から《包囲の搭、ドラン》《稲妻の天使》はたまた《概念の群れ》までプレイしているかも知れません(笑)


高橋 優太(たかはし・ゆうた)

 双頭巨人戦でおこなわれたプロツアー・サンディエゴで準優勝し、一気に世界にその名を知らしめた新進気鋭のデュエリスト。

 その年のうちに、日本選手権トップ8入りをはたし、さらに、700人を超えるイベントとなったグランプリ静岡では念願の個人タイトルを手にいれた、今もっとも勢いに乗っているデュエリストのひとり。

 「不屈のストイシズム」と形容される、その負けず嫌いで真摯な姿勢は信頼を集めており、多くのプレイヤーが彼に助言を求めている。

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