シャドウムーアでとんでもない能力を持ったツリーフォークが登場しました。

 《森滅ぼしの最長老》です。緑で「最長老」だなんて、某国民的少年漫画のキャラクターを連想してしまうのは筆者だけかもしれませんが、それはともかく、この緑のデカブツには夢と希望を感じずにいられません。

 マジックを始めたての頃。《甲鱗のワーム》を手に取り、プレイし、除去されて涙を呑んだのは筆者だけではないと思います。重いクリーチャーは常に魅力的ですが、ただプレイしづらいだけではなく、対処されてしまったときの悲しさは大変なものがあります。

 重いクリーチャーが抱えるこの2つの弱点を克服したとき、それが彼らが日の目を見るときです。

 その弱点を克服するべく、構築シーンではこのような方法がとられる事になります。


1.高速マナブーストから通常プレイ

 代表例として、イゼットロンが挙げられます。このデッキは3種揃えば3枚の土地から7マナという驚異的なマナ加速をする《ウルザの塔》《ウルザの魔力炉》《ウルザの鉱山》を活用し、8マナと重くて使いづらい《ボガーダンのヘルカイト》を高速で召喚、一気に場を掌握してしまうものでした。時には4ターン目に《ボガーダンのヘルカイト》が場に現れたりすることもあり、この爆発力がそのままデッキの強さになっていました。

 また、最近では《北方行》《野生語りのガラク》などでマナ加速し、《雲打ち》などを連打するという赤緑ビッグマナと呼ばれるデッキも流行しています。

2.リアニメイト

 この手法は遠い昔から使われてきたもので、古くは《動く死体》《再活性》、最近ではFinals2007優勝デッキが《戦慄の復活》を使って《怒りの天使アクローマ》などの超強力クリーチャーを高速で場に送り込んでいました。

 こうした行動を一般的には《再活性》の英語名から「リアニメイト」と呼ばれて、俗に「釣る」とも言われています。釣られるクリーチャーを「魚」、《戦慄の復活》などを「釣竿」と言ったりもします。リアニメイトは、スピードが魅力ですが「魚」「釣竿」が同時に揃わなければ単体が無駄カード同然になってしまう弱点を抱えています。

 余談ですが、かつて流行したソーラーフレアというデッキは《絶望の天使》という重いクリーチャーを利用するために、1,2の両方を組み合わせました。つまり、序盤にマナ加速をしつつドロースペルとして《強迫的な研究》をプレイ、数枚の《ゾンビ化》をつなぎ合わせ、後半には有り余ったマナで通常召喚する、といった感じです。これによりリアニメイトの「魚」しか引かない時という弱点を克服した形になっています。

3.《騙し討ち》などでコストを踏み倒す

 この方法はリアニメイトとは異なり墓地を利用せずに直接手札などから場に出してしまうのが特徴です。どんなに重いクリーチャーでも、破格なコストで場に出してしまえるという点が魅力になっています。《騙し討ち》にみられるように、ターン終了時に生贄に捧げなければならないなどのデメリットが付きまとうのが普通なので、「場に出たとき」の効果を利用したり「墓地に置かれたとき」の効果を利用するのが一般的です。

 この方法の代表的手段として、最近では《霊気魔道士の接触》がありました。4マナのインスタント呪文が突如7マナの《絶望の天使》を着地させ、更に《一瞬の瞬き》で能力を再利用しつつ「手札に戻す」というデメリットを解消し、再び能力利用するという動きをしました。運に左右される部分はありますが、コストを無視することの強さを改めて実感させられた人も多いと思います。


 さて、《森滅ぼしの最長老》の能力は《絶望の天使》と非常によく似ています。クリーチャーを除去することはできませんが、土地を破壊することによって相手の反撃手段を制限できる点では《絶望の天使》と同じです。

 さらに『頑強』能力が相手の除去呪文に対して非常に強くしてくれています。緑のファッティにありがちな、出してすぐに《叫び大口》で除去されてがっかりなんていうことは《最長老》には有り得ません。

 ただ、クリーチャーを除去することができないので、かつてソーラーフレアが《絶望の天使》を後半にプレイして逆転を演出してきたようなことはできません。そういう意味では後半にプレイしてもあまり能力に旨みがない可能性は高いです。なんとかして早いターンに場に送り込み、一気に勝負を決めてやりたいところです。

 とすれば、《森滅ぼしの最長老》を最速で降臨させる方法は今のスタンダードではリアニメイトが最も手っ取り早いでしょう。それも、ソーラーフレアのような中途半端なものではなく、リアニメイトに特化した形を目指します。

『夢神』 ポルンガ
2《森》
1《ペンデルヘイヴン》
2《島》
4《ヤヴィマヤの沿岸》
4《沈んだ廃墟》
4《光り葉の宮殿》
3《涙の川》
1《変わり谷》
1《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地(22)-

4《ラノワールの助言者》
4《根の壁》
4《結ばれた奪い取り》
4《ナルコメーバ》
3《森滅ぼしの最長老》
1《ボガーダンのヘルカイト》
1《ストロームガルドの災い魔、ハーコン》


-クリーチャー(21)-
2《名も無き転置》
4《思案》
4《心の傷跡》
4《戦慄の復活》
3《黄泉からの橋》
-呪文(17)-
4《思考囲い》
2《墓忍び》
2《名も無き転置》
3《雲打ち》
4《タルモゴイフ》
-サイドボード(15)-

 かつて通常のリアニメイトデッキが行ってきたように、《マーフォークの物あさり》などの「共鳴者」で手札から巨大クリーチャーを捨て、それをリアニメイトするということも可能ですが、それではあまりに普通すぎますし、《最長老》の頑強能力を活かしきれない気がします。

 そこで、今回は《心の傷跡》からのコンボを利用します。このタイプのデッキはThe Finals2007においてトップ4に残ったのが記憶に新しいですが、《心の傷跡》を自分を対象としてプレイし《ナルコメーバ》《戦慄の復活》《黄泉からの橋》、そして《森滅ぼしの最長老》を墓地に落とし、《戦慄の復活》のフラッシュバックを連打することで主に相手の土地を破壊し、反撃の芽を摘みます。

 うまくいけば《最長老》《戦慄の復活》のフラッシュバックコストにし、頑強能力を悪用しながら2体目の《最長老》召喚なんてこともできます。これを狙うために通常のリアニメイトではなく、《心の傷跡》の爆発力を採用しました。

 今まではこのタイプのデッキで「釣られる魚」は《ボガーダンのヘルカイト》が主だったのですが、例えば場に出た返しのターンで《神の怒り》を喰らうとほとんど何も残らないという弱点を抱えていました。ですが《最長老》であればそういった心配は全く要りません。《神の怒り》を抱えて恨めしそうにする対戦相手の顔が目に浮かぶようです。

 青黒純正2色で組むことは可能ですが、今回は更なるスピードを求めるために緑を加え、ディスカード手段兼マナ加速の《ラノワールの助言者》、そして最強のマナ加速である《根の壁》を採用することで最速3ターン目に《心の傷跡》をプレイすることも可能にしました。このスピードはスタンダードでは最速です。

 一応、あまり褒められたプレイではありませんがおまけとして《最長老》を素でプレイすることも可能です。マナベースの面では、本来色を足すことは事故率の上昇を招くのであまり気が進まないのですが、ここでシャドウムーアで注目の《沈んだ廃墟》は素晴らしい活躍をしてくれます。

影の立役者

 《心の傷跡》{3}{U}{U}というコストをクリアするのが非常に簡単になります。また、青緑タッチ黒という体裁を取り、本来「タッチダブルシンボル」は危険なはずなのに、《沈んだ廃墟》が大きな助けとなって{2}{B}{B}というコストを持つ《戦慄の復活》も普通にプレイすることが容易になります。つくづくこの種の土地の強さを思い知ります。

 このタイプのデッキは《心の傷跡》をいかにしてプレイするかということが課題になっています。デッキには《ナルコメーバ》《黄泉からの橋》という手札に引いてしまうとほぼ無駄になってしまうカードが7枚も入っているため、《心の傷跡》を引けないとほとんど戦えないのです。今回はとにかくそうした無駄カードを回避しながら《心の傷跡》を引き込むために《思案》を採用しました。プレイしたとき《心の傷跡》が見えなければ大抵シャッフルしてしまって良いと思います。

 このデッキの弱点は墓地対策に加えてカウンター呪文です。《思考囲い》などの手札破壊も辛いといえば辛いのですが、ドロー手段が豊富に含まれているのでそれほど致命的ではありません。それよりも肝の《心の傷跡》をカウンターされてしまうほうが敗北が近くなります。そこでサイドボードには《思考囲い》に加えて《タルモゴイフ》を採用します。これら2枚が序盤からプレッシャーを与えればカウンターをかいくぐることも不可能ではありません。赤の火力を撃ってくるようなデッキに対しては《祖神に選ばれし者》がリアニメイトの対象として最高の働きをします。

 また、墓地対策に対しては《墓忍び》が有効です。《トーモッドの墓所》などを置かれたとき、普通は《戦慄の復活》などに合わせて起動されますから、それを逆手にとって探査で出してしまうと対戦相手は対処に困ることが非常に多いのです。


 さて余談になりますが、今回のデッキ名は夢神とかいてポルンガです。何故このデッキ名なのか分かる人はきっと筆者と仲良くなれると思います(笑)

 《森滅ぼしの最長老》の有効な使い方は、今回挙げたリアニメイト以外にも《葉冠の古老》の族系でめくってみたり、シャドウムーアの《場当たりの襲撃》から出してみたり、様々な方法があります。皆さんもご自分で色々と考えてみてはいかがでしょうか?

もしかしたら…

 それでは楽しい週末を!


清水 直樹(しみず・なおき)

 プレイヤーとして日本選手権やGP京都でのトップ8入賞経験を持つ一方で、ライター活動にも精力的な関東の若手デュエリスト。国内はもちろん、海外のウェブサイトへの寄稿経験を持つ稀有な存在。

 また、独創的なデッキを構築するビルダーとしても有名。特に、青緑のカラーコンビネーションを軸としたデッキを好んで構築するため、青緑ギルドにちなんだ「シミックの王子」の二つ名で知られている。

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