第16回戦: 捷利への旅立ち
ニコ・ボニー vs. ギョーム・ワフォ=タパ
By ネイト・プライス(translated by Keita Mori)
トーナメント最終ラウンドたるもの、かくあるべし。高い技術を誇るプレイヤーたちが必勝を期した「絶対に負けられない戦い」以上のエンターテインメントなどあろうものか。
まずはフランスのギョーム・ワフォ=タパたが、もしも事ここに及んで彼のことをご存じないとおっしゃるなら、そもそも貴方がどうやってこのウェブサイトを見つけたのかを逆におたずねしたいところだ。この男はつい先ほどまでマジック:ザ・ギャザリングというゲームの世界を支配していた大人物なのだ。もっとも、最終戦を安易にインテンショナル・ドローで済ませてはならないという美的観念があるかどうかはさておき、もはや彼も「勝つか、荷物をまとめて家路につくか」という崖っぷちに追い込まれてしまっている。
そして、ワフォ=タパのプロツアー連続ベスト8進出を阻もうとしている男がニコ・ボニーだ。ボニーはプロツアーに参戦すること数年というキャリアのプレイヤーで、昨年の世界選手権で団体戦優勝を果たしたスイス代表チームの一員でもあった。加えて彼はグランプリ・トリノのチャンピオンベルトも獲得しており、プロツアー・クアラルンプールでも上位32位以内に入賞している。
第1ゲーム
 | ニコ・ボニーとギョーム・ワフォ=タパは、 勝てばトップ8という位置にいる。 |
ワフォ=タパはダイス・ロールに勝利し、3枚のヴィヴィッドランド(※「鮮烈な」シリーズの土地)を置いて極彩色のマナベースを作り上げる立ち上がりを見せた。一方のボニーは《樹上の村》のタップイン設置からスタートし、フランス人のプロツアー連続トップ8進出を阻むべく、《台所の嫌がらせ屋》を召喚。ワフォ=タパは続く自分のターンのメインフェイズに《入念な考慮》を使用してデッキを掘り進み、手札であそんでいた余剰気味の土地を処理することになった。不運にも、彼のドロースペルは呪文カードを提供してくれるところ少なく、ワフォ=タパは2枚の土地を捨てたというのに、彼の手札にはなお3枚の土地がくさっているというていたらくであった。そしてボニーは《思考囲い》でもってその事実を知り、手札から《その場しのぎの人形》を捨てさせ、残された呪文カードが2枚の《殺戮の契約》と1匹の《雲打ち》であることを知った。
ワフォ=タパを《台所の嫌がらせ屋》が攻め立て、ボニーは雄大で逞しい《包囲の搭、ドラン》を戦線に追加した。ドランによって嫌がらせ屋は2/2というサイズに「縮んで」しまったものの、実質5/5のクリーチャーを手にしたボニーは大してこの変化を気に病んでいなかっただろう。続くターンにワフォ=タパが出来たことと言えば、《反射池》をおいてターンを返すだけ。ワフォ=タパの2枚の《殺戮の契約》も、黒塗りのドランの前ではたいして役に立たない。
ボニーは《樹上の村》、《台所の嫌がらせ屋》、《包囲の搭、ドラン》による一斉攻撃でワフォ=タパのライフを一気に削りとり、残りライフ7点。ここでワフォ=タパが《殺戮の契約》で《樹上の村》を除去しなかったのは、次のターンにマナを使って《雲打ち》をプレイし、その上で《殺戮の契約》をボニーのアタッカーに撃ち込みたかったからだ。続くターンもボニーは先程とまったく同じ陣容でのアタック宣言を行い、ワフォ=タパは「瞬速」で《雲打ち》を召喚。この召喚によってワフォ=タパのライフトータルは5点まで減少してしまうが、その巨大な体躯をドランの進路に横たえ、ブロック宣言。さらに、予想通りに、ワフォ=タパは《殺戮の契約》を《樹上の村》へとプレイ。しかしながら、ボニーも手札にしっかりと《名も無き転置》を持っていて、これが《雲打ち》へ-3/-3の修整を与える。この横槍によってドラン(5/5)と《雲打ち》(4/4)の勝負はドランの一方的勝利という結果になるのだ。ボニーの《台所の嫌がらせ屋》がワフォ=タパのライフを2点削り落とす。
もはや防御要員もなく、ドランに抗する呪文も手札にない。契約の代価を支払った後にカードを引いたワフォ=タパだったが、そこで彼は《謎めいた命令》にめぐりあえなかった。ギョーム・ワフォ=タパ、ここで投了。
ボニー 1-0 ワフォ=タパ
ワフォ=タパのデッキはボニーの素早い《包囲の搭、ドラン》攻勢に対して回答を用意できなかった。というか、ワフォ=タパのパーマネント除去で直接的にドランを排除できるものはなく、なんとか5点のダメージを与えてドランを倒すほかないのだ。《根の壁》はドランに対して威力絶大にして効果覿面だが、この場合「序盤に引き当てろ」、「そこからマナを出すな」という注文がつく。
第2ゲーム
2ターン目に《根の壁》というスタートをきったワフォ=タパだが、明らかに私が書いたばかりの文章を読んでいたように思える。しかし、不幸にも、《根の壁》作戦にはすぐさま試練が与えられた。そう、ボニーは第1ターンの《極楽鳥》スタートから、第2ターンに《包囲の搭、ドラン》を投入してきたのだ。2ターン目に5/5! Yehokay! さらにワフォ=タパの状況を困難にしたのがボニーの《忘却の輪》で、ここで攻撃の要だった《根の壁》がゲームから退場となったのだ。かくて無人の荒野を蹂躙しはじめるかに見えたドランだったが、ここでワフォ=タパは《追い返し》よろしく《謎めいた命令》を使うことで巨大アタッカーをバウンスした。
次のターンにワフォ=タパは《台所の嫌がらせ屋》を召喚し、状況をコントロールするまでの時間を少しばかり稼ぎ出した。しかし、不運にも《包囲の搭、ドラン》が再臨したことによって《台所の嫌がらせ屋》は《樹上の村》と相討ちを果たせないサイズとなってしまう。それでもワフォ=タパは敵軍の猛攻が始まる前に2個目の《根の壁》をプレイすることが出来たが、それによって膠着を演出できたのも数ターンにすぎなかった。なぜならボニーのたった一枚の《思考囲い》がワフォ=タパの手札を丸裸にし、《その場しのぎの人形》を捨てさせた上で、ワフォ=タパのハンドが土地しか残されていない「トップデッキ頼み」状態であることがわかってしまったからだ。
そんなわけで、《根の壁》にブロックされて相討ちとなる(ああ、なんたる皮肉!)ことを承知の上で《包囲の搭、ドラン》を突撃させるボニー。そして、相討ちの後に、交代要員の《包囲の搭、ドラン》2号機がスイス軍から補充される。続いてボニーがドランと《樹上の村》で攻撃すると、ワフォ=タパの《台所の嫌がらせ屋》は「ひとりはみんなのために」精神で時間稼ぎのチャンプブロック。ボニーは続くターンに《苦花》を咲かせようとしたのだが、これはワフォ=タパが今まさに引き当てたばかりの《ルーンのほつれ》で打ち消す。この攻防に続いて2体の《樹上の村》と《包囲の搭、ドラン》と《極楽鳥》でボニーがアタックすると、ワフォ=タパは引きたてほやほやの《その場しのぎの人形》を使わざるをえない状況となり、《根の壁》あらため「ドラン捕食の壁」を墓地から釣りあげる。この《根の壁》は前菜として《樹上の村》を、メインディッシュで《包囲の搭、ドラン》をたいらげるという無類の大食漢ぶりを見せつけた。ここでボニーは《苦花》を咲かせ、試合の流れを引き寄せる。
そうこうするうちに、数多くのプレイヤーとウィザーズ社員の数により、とても大きな観衆の輪がこの試合テーブルを取り囲んでいた。そしてワフォ=タパの《根の壁》がボニー《樹上の村》の村をたいらげたとき、私の後方でランディ・ビューラーが満足そうに含み笑いをした。
「《根の壁》が《樹上の村》をブロックして、それを倒した。これとまったく同じブロックによって異なる結果がもたらされたのを何度見てきたことか…」
続くターン、ボニーは勝負を決すべく鉄槌をふるった。すなわち《不敬の命令》によって「その場しのぎ」の《根の壁》を破壊し、一対の《樹上の村》と一匹の伝説のツリーフォークとを突撃させたのだ。ワフォ=タパは包囲の塔を嫌がらせ屋でチャンプブロックするほかなく、残りライフは9点に。続く《台所の嫌がらせ屋》によってワフォ=タパのライフも11点というところまで息を吹き返すが、それもボニーの突撃作戦によってすぐに7点に削り落とされた。結局、ここでワフォ=タパは「なんとか檻を脱することのできるカード」を引けず、彼はボニーと握手した。
ボニー 2-0 ワフォ=タパ
 | | ニコ・ボニーは高額賞金を視界にとらえている! |
試合終了後、フューチャーマッチ対戦席のプレイヤー名と国籍を記入する担当のジャッジがボニーに謝った。彼の祖国スイス連邦のかわりに、ボニーの国籍欄にはチェコ共和国と記載されていたからだ。大会を運営管理しているソフトウェアであるDCIレポーターは、プレイヤーの国籍を三文字略語で表記しており、スイスはCHE(瑞西)で、チェコ(捷克)はCZEとなるのだ。ボニーは笑って謝罪を受け入れた。
「もうお前はチェコ人だな!」
祝福がてら、ボニーとスイス代表でも共闘したクリストフ・フーバーはこう茶化した。
「そうだなぁ」とボニー。「明日の決勝ラウンドの前に、チェコのシャツを買ってこなくちゃいけないかもね」
スイス編 完。
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