第1回戦:パリの夜の夢
八十岡 翔太 vs. クリストフ・フーバー
by Nate Price translated by Kenji Suzuki
プロツアー・ハリウッドの第1回戦へようこそ!いよいよ今日からスターたちが一堂に会し、そしてフィーチャー・マッチではその中でもビッグ・ネームたちによる戦いが繰り広げられることになる。プロツアー・クアラルンプールで優勝したばかりのジョン・フィンケルもこのフィーチャーエリアの席に着いている。その隣のテーブルには、アメリカのマジック界におけるもう1人の古豪であり、やはり最近復活を果たしたプレイヤー、プロツアー・ジュネーブのチャンピオン、中西部出身のオールラウンド・プレイヤー、マイク・ハーロンがいる。彼の対戦相手もなかなかのものだ。彼らの名は栄えあるルーキー・オヴ・ザ・イヤー、渡辺雄也であり、フィーチャー・マッチではやはりおなじみの顔で、強豪の対戦相手にも動じていない様だ。
これらの中では、救命用具なしではわたしはまるで才能の海の中でおぼれてしまいそうだ。そんなわけで私は席に着く必要があった。息を整え、そして私は記事を書くべきフィーチャー・マッチを見つけた。それは間違いなく今週末繰り返し行われるであろう組み合わせ、この環境における2つの主流デッキの戦いだ。最近世界選手権でスイスドローをトップ抜けしたクリストフ・フーバー、彼は予選シーズンを通じて強さを発揮していた緑黒のエルフデッキを使っている。その反対側にいるのは、グランプリでも最近の北九州を含め数多くのベスト8に輝いている現在の日本マジック界の大スター、八十岡翔太である。彼はこのトーナメントに来ている多くのプレイヤーが念頭に置いていた、伝統的なフェアリーデッキを使用している。もしそのデッキがフェアリーデッキを倒せないなら、おそらくそれのデッキで最終日に進出するためにはなにか神の奇跡のようなものが必要だろう、といった感じで。
第1ゲームは双方のプレイヤーがマリガンするという不幸なスタートであり、フーバーは6枚、八十岡は5枚の手札でスタートすることとなった。フーバーは1ターン目に《思考囲い》を使用し、八十岡の《霧縛りの徒党》を落とした。彼が置いたばかりの《変わり谷》のマナを使って3ターン目に置いた《傲慢な完全者》は日本人プレイヤーの《ルーンのほつれ》に会った。次ターンに再び打たれた《思考囲い》で《霊魂放逐》を落とすことによって、八十岡の手札への攻撃は完了することとなった。この時点で八十岡に残されたのは《地底の大河》と《神秘の指導》であり、場に何も助けになる物がない以上、何か意味のあることをするにしても少々遅すぎる状況だ。事実上八十岡は何もない状態となった後、フーバーは《台所の嫌がらせ屋》というやっかいなクリーチャーを追加した。
《台所の嫌がらせ屋》は今週末多くのシーンをにぎわす1枚になることだろう。このカードはほとんどのデッキにとって除去しづらい、非常に有能なクリーチャーだ。彼らは《滅び》で生き延びる。そして少なくとも1回は必ず1対1交換が出来る。彼らは追加のライフをもたらし、赤いデッキに対するブロッカーともなり、ゲームの主導権を握るには完璧なカードだ。彼らの能力はまさに《スパイクの飼育係》を思い起こさせる。それはたちまにゲームに多大な影響を及ぼし、それが環境から離れた後も、その活躍は伝説として残されている。
5ターン目にフーバーは2枚目の《変わり谷》を出し、そして攻撃によって5点のダメージを与えた。八十岡が出来ることと言えばそのダメージを受け、《神秘の指導》によって《恐怖》をサーチして今後のダメージを遅らせようとすることくらいである。彼は次のドローでようやくこの状況で有用なカードを持ってくることが出来た。《苦花》は、ライフ以外のリソースを何も使うことなく、彼に毎ターン新しいクリーチャーをもたらしてくれる。《苦花》をプレイした後、八十岡はまだ《変わり谷》を含む土地を3枚残しており、これで彼は次のフーバーの攻撃のうち2体をなんとかすることができる。
フーバーは、相打ちをおそれることなく、《変わり谷》と2体の《台所の嫌がらせ屋》を八十岡に送り込んだ。予想したとおり、八十岡は自分の《変わり谷》を起動してフーバーのそれの相打ちをねらい、そして《台所の嫌がらせ屋》に《恐怖》を打ち込もうともくろんだ。しかしながら、フーバーの《殺戮の契約》によって八十岡の《変わり谷》はブロッカーとなる前に破壊されることとなった。八十岡にはそこからマナを出して《台所の嫌がらせ屋》に対する《恐怖》のマナとして使用する以外の選択肢は無かった。《台所の嫌がらせ屋》は復活してくるものの、次に攻撃することとなれば、八十岡の《苦花》から出てくるフェアリーはそれをゴミ箱行きにすることができる。フーバーはさらに《台所の嫌がらせ屋》を追加して攻撃陣を強化させ、さらに2枚目の《変わり谷》も追加した。八十岡は《苦花》からダメージを受けながら、おそらく日の目を見ないであろう《祖先の幻視》を待機させることくらいしかできない。
フーバーは《殺戮の契約》のコストを支払い、《変わり谷》の1枚を起動し、そして攻撃陣をレッド・ゾーンへと送り込んだ。新たなフェアリー・ローグ・トークンは小さくなった《台所の嫌がらせ屋》をブロックし、ダメージによって彼のライフは6となった。《苦花》によってそれはさらに5点へと下がることとなる。余りよい状況ではない。次の攻撃で、フーバーは彼は相手の急所を攻めた。両方の《変わり谷》をクリーチャーとし、《台所の嫌がらせ屋》と一緒に一気に日本人プレイヤーを倒しにかかったのである。しかしながら、《霧縛りの徒党》がその計画を挫くこととなった。これによって八十岡は《苦花》を覇権することができ、それによって危険なクロックを除去し、さらにクリーチャーとなった土地をタップし、そして《台所の嫌がらせ屋》を台所へと追いやる事ができる。悪くない《Time Walk》だが、しかし彼が圧倒的に不利である事には変わりない。
その後八十岡による抵抗が数ターン続いたものの、フーバーからより多くのクリーチャーが送り出されるに至り、八十岡は投了することとなった。
フーバー 1-0 八十岡
頑強はとてつもなく強力なメカニックで、先ほどのゲームではその前評判に恥じない働きを見せた。もしも《台所の嫌がらせ屋》を除去しようとするなら2回除去しないといけないということで、それは八十岡に、ついでにマナも縛れるということで、《変わり谷》に対して(本当はこんなダメージの低いクリーチャーに対しては使いたくない)《恐怖》を使わせることとなった。彼が何とか《台所の嫌がらせ屋》を除去したときにも、それは単にほんの少し小さくなって帰ってくることとなった-しかしそれでも八十岡のクリーチャーのほとんどと相打ちを取れる大きさだ。
第2ゲームは再びフーバーのマリガンから始まり、そしてやはり1ターン目の《思考囲い》によって八十岡の《滅び》が落とされた。彼の手札の残りは《ザルファーの魔道士、テフェリー》、《恐怖》、《人里離れた谷間》、そして《島》だ。3ターン目の《傲慢な完全者》はその《恐怖》を使わせることとなった。4ターン目に八十岡は《変わり谷》を起き、そして《思考囲い》を免れた《苦花》もプレイした。特にフーバーが攻撃手段を持たない時点での序盤の《苦花》はまさに八十岡が優位をつかむポイントだ。これに対してフーバーが持っているのは今のところ《樹上の村》だけである。八十岡はまた頑強を持つ《台所の嫌がらせ屋》に対する対抗手段をフーバーに示した:《霊魂放逐》である。そもそも場に出なければ、それが再び場に戻ってくることもないというわけだ。
しかしながら、《樹上の村》のおかげで、フーバーはそれでも場にある程度の影響を与えることができた。7ターン目地点で、八十岡はフェアリー・トークンを3体持ち、この騎乗軍団はゲームを我が物にしようとねらっている。フーバーの《樹上の村》はサイズは大きいが、しかし八十岡は常にマナを残したまま相手にターンを渡すので、この時点でダメージレースへと持ち込むのはフーバーにとっては少し危険な賭けだろう。フーバーは場に何か他の攻撃手段を出そうと試みるが、彼の《カメレオンの巨像》は2枚の《ルーンのほつれ》によって沈められることとなった。
フーバーは《茨森の模範》をプレイして再びクリーチャー陣の増強を試み、この時点で彼には3マナが残されていた。八十岡がターン終了時に《ザルファーの魔道士、テフェリー》をプレイするのにマナを使用した時、フーバーはこの行動を予測していたわけだが、彼は《突風線》を1点で使用し、八十岡のかわいいフェアリーたちをすべて殺すことに成功した。次のターンに《ザルファーの魔道士、テフェリー》がダメージを与え、《苦花》のフェアリーたちの分のダメージを埋め合わせることとなった。そしてフーバーが次にようやくメイン・フェイズを迎えたとき、彼はこのやっかいな魔道士を《殺戮の契約》によって除去した。そして彼は《茨森の模範》と《樹上の村》を八十岡に向けて送り込み、それに対して八十岡も自分の《殺戮の契約》で土地の方を除去した。この時点で八十岡は14点という十分なライフを持っており、一方フーバーは成長し続ける攻撃陣にさらされながらの8点という危うい状況だ。次のターン、追加のフェアリー・ローグ・トークンの隣に《妖精の女王、ウーナ》が登場した時点で、フーバーにはなすすべがなかった。
フーバー 1-1 八十岡
このゲームではどちらのプレイヤーも最高のドローだったというわけではない。八十岡は八十岡は1ターン目からそう時間がかからないうちに《苦花》を引くことが出来たわけだが、これは《思考囲い》されることなくすぐに場に出すことが出来たという点で非常に大きな利点となる。序盤の《苦花》は極めて対処するのが難しい。それに加えて序盤にフーバーは場に影響を与える様なクリーチャーを全く持っていなかったため、このゲームの主導権はしっかりと八十岡によって握られていたと言える。土地クリーチャーは非常に強力だが、しかしそれは同時に多くのマナ投資を伴い、序盤の《苦花》を目の前にすれば結局他のことにマナを使う必要が出てくる。ダメージレースで《苦花》に勝つことは、自分の攻撃陣が増強され続けてもしないかぎり難しいのだ。
最終ゲームでも両方のプレイヤーがマリガンし、何かマリガンはこのフィーチャー・マッチのテーマであるかのようだが、フーバーの方が明らかに良い手札を手にすることとなった。最初の4ターンで《樹上の村》、《茨森の模範》、そして2枚の《変わり谷》をプレイしたのだが、これはほぼ彼のデッキが出来るもっとも攻撃的なスタート方法だろう。一方八十岡は、3枚目の土地を見つけることが出来ない。4ターン目にようやくその土地が登場したとき、彼は《祖先の幻視》を待機させ、そして《叫び大口》の喚起によって《茨森の模範》を除去した。彼のライフは10点とすでに折り返し地点であり、やはり《祖先の幻視》が日の目を見るには十分でないかもしれない。
5ターン目にフーバーは《傲慢な完全者》をプレイし、これは彼にとってトークン製造器としても、そして土地クリーチャーを強化する手段としても機能してくれる。彼はその新たに強化された《変わり谷》で攻撃し、八十岡のライフは7点となった。状況はなかなか動かしがたいところとなった。ついに4枚目の土地を引いた後、八十岡は何分かかけていくつかの選択肢を検証し始めた。そして熟考の結果、彼は結局そのままフーバーにターンを渡した。
フーバーは少しスピードを緩めることにし、《傲慢な完全者》と《変わり谷》のみで八十岡への攻撃を試みた。日本人プレイヤーは《謎めいた命令》を使って《傲慢な完全者》をバウンスした上でカードを引き、これで受けるダメージは2点に減ることになった。フーバーは《傲慢な完全者》の代わりに《カメレオンの巨像》を場に出し、ターンを渡した。
八十岡は未だに5枚目の土地を見つけることが出来ず、そして対処するには少し多すぎる攻撃陣に直面していた。フーバーが《カメレオンの巨像》で攻撃して八十岡のライフを1にしようとした時、彼は《謎めいた命令》を使ってそれをフーバーの手札へと戻した。八十岡のライフは依然5のままだが、フーバーは《カメレオンの巨像》を置き直すのと同時に、《茨森の模範》もプレイした。八十岡は自分のターンで土地を引き、それをプレイして、そのままターンを渡した。次ターンに敗北に十分な攻撃を受けた時、八十岡は《謎めいた命令》を再び使ってフーバーの攻撃陣をタップし、そして《カメレオンの巨像》を手札に戻させるしかなかった。八十岡はこの時点でタップアウト(すべての土地がタップされた状態)であったから、フーバーは《突風線》で最後の5点を削りにかかった。これは《否定の契約》されたがしかしこれは避けられない事態を遅らせることくらいしかできなかった。八十岡は《否定の契約》のコストを払わずに死ぬか、それとも再びタップアウトの状態で相手の決定的な攻撃を受けるしかないわけだ。彼は名誉ある道を選び、仮に《殺戮の契約》があったとしても十分なダメージを与えるクリーチャーたちの攻撃に彼は屈することとなった。
フーバー 2-1 八十岡
私は試合の後にクリストフと彼のデッキについて話すことにした。私はこのイベントの前では、このデッキのフェアリーとの相性はフェアリーの方が有利だと信じていたのだが、しかし彼は自信を持っていた。「この組み合わせはそんなに悪くないよ。それが僕がこのデッキを選んだ理由だしね。《苦花》はこのデッキに対してはそんなに良いカードじゃない。こっちにはコストの安い2/2以上のクリーチャーがいっぱいいるし、トランプルのあるクリーチャーもいる」。《思考囲い》はことあるごとに八十岡を効果的に邪魔することになり、この試合では重要な役割を持っていた。「フェアリーデッキは2戦目以降《滅び》が入るけど、そのカードはそれほど悪くない。でも《謎めいた命令》はこっちにとって最悪のカードで、落とすとすればそれを落とすね」。
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