決勝: 今週の第一位、チャールズ・シンディ!

ジャン・ルース vs. チャールズ・ジンディ

ビル・スターク(translated by Keita Mori)



ドイツとマーフォークを代表する男、ジャン・ルース

 人生初となるプロツアー・トップ8進出が決まってから、チャールズ・ジンディは友人とプレイテストしつつも、パンダ・エクスプレス(*中華料理系レストラン)のテイクアウトメニューをつまむという祝勝会を開いた。そして、この晩のフォーチュン・クッキー(*おみくじ入り)に書かれていた運勢は「あなたは有名になれるでしょう」という思いがけないほど良い内容だった。はたしてアメリカの若者がそれを成し遂げられるかどうか、すべてはドイツ人ジャン・ルースとの激戦の行方にかかっているわけだが、チョ・ユンファの《目覚ましヒバリ》デッキとの厳しい準決勝を切り抜けられた今、ジンディがゴキゲンなのは間違いないだろう。

第1ゲーム

 静かにたたずむルースは対戦相手のアメリカ人にやすやすと大業をなさしめるつもりもなく、開門して《川の案内者、シグ》《アトランティスの王》を放った。チャールズはなんとか「シグ」を《恐怖》で殺し、自軍陣地に《ボリアルのドルイド》《護民官の道探し》、そして《野生語りのガラク》を展開していった。X=3の《不敬の命令》がルースの《アトランティスの王》を倒し、墓地から《護民官の道探し》を復活させる。2/2クリーチャーは《野生語りのガラク》を守るために《変わり谷》によってチャンプブロックされ、ジンディにもう一枚の土地をプレイする時間を与えた。

 ルースは《メロウの騎兵》によって2/2クリーチャーを戦端に送り込むことを継続し、これによってパンプアップされた《変わり谷》をアタッカーとして起動した。ジンディも相手にプレッシャーをかけ続けるべく《思考囲い》をプレイし、《謎めいた命令》を奪ってドイツ人の手札が2枚の土地だけという状況を演出した。さらにチャールズは《野生語りのガラク》からこのゲームで2匹目となるビースト・トークンをよびだした。ドイツ人にとって形勢は有利とはいえないが、ここまでの攻防によるライフ推移は17対15でルースのリードということになる。

 ルースは次のドローで《川の案内者、シグ》を引き当て、これを召喚してから《変わり谷》を起動して攻撃し、「シグ」の能力によってジンディのすべてのクリーチャーへの耐性をもつ「プロテクション:緑」を与え、この戦闘ダメージによってプレインズウォーカー《野生語りのガラク》を破壊した。しかしながら、「シグ」のプロテクション能力によって自軍のマーフォークを守るだけの十分なマナがルースには残されておらず、この隙を逃さずジンディは《不敬の命令》を引き当てることが出来た。ジンディは敵陣の伝説のマーフォークをつまみだし、緑色の大群での総攻撃によってルースの残りライフを4点まで削り落とす。ジャン・ルースは次のターンのドローで解決策を見出せず、すぐにカードを片付けはじめた。

チャールズ・ジンディ 1-0 ジャン・ルース

 マンネリに陥りがちなサイドボードの時間だが、我々は二人の選手の競技者としての精神状態を観察できることになった。プロツアー決勝という大舞台に興奮しているジンディのそれは明らかに熱狂的で、デッキを注意深くシャッフルしつつも、カードをならべる手さばきがどこかすばやい。対照的に、より冷静沈着なたたずまいのルースは入念に、じっくりとパイル・シャッフルを行いつつ、これからの試合のゲームプランを練り直しているかのようだった。そして、ジンディは椅子の上にどっかりと座りなおした。

 「さて、君が選ぶ番だよね」とジンディ。

 「先攻」と、間髪いれずに答える対戦相手の口調からは、「聞くまでもなかろうに」というニュアンスが言外に含められていた。

 「まあほら、後手っていう選択肢だってないわけじゃないからね」と茶化すジンディ。「驚くべきことに、今週末僕の前でそう宣言したヤツはただの一人もいなかったんだけどね…」

第2ゲーム


チャールズ・ジンディはアメリカに今年二つ目となる
プロツアータイトルをもたらしてくれるだろうか

 アメリカ人の対戦相手がすすめてくれた後手を選ぶべきだったかどうか、おそらくドイツ人はそれを再考しながらマリガンを宣言し、《アトランティスの王》という2マナクリーチャーを展開した。対するジンディは2ターン目にサイズでうわまわる《レンの地の克服者》を召喚し、追加コストの支払いの際に《傲慢な完全者》を公開した。これを受けてルースは3マナクリーチャーを召喚することなく《変わり谷》を置いたのみでターンを返す。マナをたてたルースの構えは脅しとしての効果を発揮したようで、《傲慢な完全者》をプレイしたジンディは4/4になった《レンの地の克服者》でのアタックを見送った。このプレイは奇妙に思えるかもしれないが、この週末を通してエルフで勝ちあがってきたアメリカ人チャールズ・ジンディがこのデッキに精通していることは証明済みだ。

 《誘惑蒔き》《傲慢な完全者》を奪いにかかったルースだが、ジンディはすぐさまこれを《恐怖》で対処し、さらに自軍に《タルモゴイフ》を追加。《レンの地の克服者》が恐怖を捨て去って攻撃に参加し、この一撃でライフレースは17対16でジンディがリードすることになった。ジンディのライフが《稲妻》を食らっているのは、三度にわたるペインランド《ラノワールの荒原》使用のためだ。ルースは2体目の《誘惑蒔き》で再度《傲慢な完全者》を奪い取り、《祖先の幻視》を「待機」した。

 チャールズは「想起」での《叫び大口》によって《誘惑蒔き》を除去し、さらに《野生語りのガラク》を展開。チャールズは軍勢を率いて攻撃を行うが、敵陣からの《変わり谷》《アトランティスの王》の反撃にそなえて《レンの地の克服者》だけは待機させる。もっともこのプレイはルースの《謎めいた命令》によって無駄になってしまう。ルースはここで《傲慢な完全者》をバウンスし、チャーリーのクリーチャーをすべてタップさせることを選択したのだ。この後のルースの突撃を受けて《野生語りのガラク》はむなしく散った。

 しかしながら、チャールズの優勢が一気に覆ってしまったわけでもなく、《レンの地の克服者》《タルモゴイフ》のアタックで対戦相手の残りライフを8に。その上でチャールズはもう一度《野生語りのガラク》を呼び出し、その能力で2枚の土地をアンタップして《タルモゴイフ》を召喚する。

 ガス欠気味の現状を打ち破るためにカード補充を期待したい《祖先の幻視》にも「待機」カウンターが2つ残っており、ルースは苦境に陥った。さらに、対戦相手の次の攻撃によって残りライフ2点となってしまったルースの前に、「ガラク」からのビースト・トークンと《カメレオンの巨像》までもが追加されてしまった。ここでルースは投了し、ライブラリーの一番上のカードを覗き見てからデッキを片付けはじめた。

チャールズ・ジンディ 2-0 ジャン・ルース

 フューチャーエリアの外の大型スクリーンで試合を観戦しているマジックプレイヤーたちから歓声があがった。ホームタウンでもあるアメリカを代表するチャールズ・ジンディがプロツアー・ハリウッド優勝に王手をかけたからだ。ジャン・ルースは冷淡そうなポーカーフェイスを崩して微笑んだ。

「どうも君にはもうファンがついたようだね」

 対戦相手は歯を見せて笑い、答える。

「ああ、どうやらそうみたいだ。こんなこと想像もできなかったよ…」

第3ゲーム


そして観衆はヒートアップ!

 両雄とも、それぞれの陣営で加速役となるクリーチャーの展開から第3ゲーム序盤をスタートした。ジンディのそれは第1ターンの《ラノワールのエルフ》で、ルースは2ターン目の《石ころ川の旗騎士》だ。ただ、チャールズが果敢にこのエルフで襲いかかったため、ルースもここでブロックしての相討ちを選択し、どちらも盤面に長くとどまることは出来なかった。第3ターンにルースのブロックの真意が明かされ、2体目の《石ころ川の旗騎士》が登場しつつ、場には《変わり谷》が置かれる。

 チャールズ・ジンディが2ターン目と3ターン目に何も行動を起こせなった一方で、すぐさまドイツ軍には《川の案内者、シグ》が加わる。しかし、アメリカ軍の土地は2枚の《変わり谷》入りで構成されており、ブロックでの応戦は可能だ。そしてジンディの《カメレオンの巨像》が通り、ルースが5ターン目に何も出来なかったため、ゲームの状態は互角になったと言えるだろう。

 両雄ともに盤面整備に取り掛かり、そしてジンディは《カメレオンの巨像》での攻撃を開始した。ルースは《変わり谷》《川の案内者、シグ》でのブロックを宣言し、4/4クリーチャーと相討ちになるまえに「プロテクション:緑」宣言で「シグ」の能力を起動し、戦闘を優位に進めた。しかし、戦闘後にジンディは「シグ」の「プロテクション」を起動するためのマナをあえて使わせたかった理由を明らかにし、《叫び大口》を召喚して「シグ」を対象とした。もう一度能力を起動するだけのマナが残されていたルースは「プロテクション:黒」を宣言しようとし、そこにレスポンスして《殺戮の契約》をチャーリーが叩きこんだ。この攻防で、アメリカ人はゲームの流れをぐっと引き寄せた。

 続くチャールズ・ジンディの2体の《傲慢な完全者》たちは《太陽の槍》連打で討ち取られたものの、それでもアメリカ人は次の1体を場に踏みとどまらせた。さらに《カメレオンの巨像》《レンの地の克服者》を追加してくるアメリカ軍に対して、なんとかジャン・ルースも人魚軍団を構築していった。しかしながら、人魚たちはアメリカ軍にとって格好の餌食だった。ルースは《アトランティスの王》《銀エラの達人》《石ころ川の旗騎士》と展開していったが《恐怖》が時のらせん(Time Spiral)にて再録された「王」を屠った。

 チャールズは《傲慢な完全者》を残して、彼女によって強化された《カメレオンの巨像》《レンの地の克服者》《変わり谷》を突撃させた。この攻撃による9点のダメージを受けてルースのライフは一気に10点にまで削り落とされる。ここまでマナフラッド(*マナ過剰なドロー)となってしまっていたジャン・ルースは、この試合で最後のドローとなった1枚を公開した。それもまた、土地だった。ルースは冷静に、しかしながら笑みを浮かべてアメリカ人に手を差し出した。ルースは肩をすくめ、自分のデッキに向きなおってつぶやいた。「ダメだ、これじゃ無理だよな…」

 かくして、チャーリー・ジンディの深夜のパンダ・エクスプレスへの旅は、本当に思いがけない幸運をもたらしてくれたのだった。


 チャールズ・ジンディが3-0でジャン・ルースをくだし、我等がプロツアー・ハリウッド王者に輝いた!

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