ウィンストン・ドラフト
……と、恐ろしい脚の話

アーロン・フォーサイス
Translated by Yoshiya Shindo
"Latest Developments" 2005年3月25日掲載分より


 前回、magicthegathering.com上では、私の過去のコラムが再掲載されていた。火曜日の夜遅くだったはずだけど、そのコラムの再掲載の注意書きにも書かれていた通り、私はインフルエンザにやられていた。

 いや本当。

 その前の月曜日にプロツアー・アトランタから戻って、その日の夜はなんともなかった。私がやったのは、旅から帰ったら必ずやることの一通りだ――子供と遊んで、妻としゃべって、両親に電話して、荷物を半分ほどいて、シャワーを浴びる。そしていつも通りシャワーから上がって体を拭いていたら、不意に寒気が襲ってきたんだ。こいつは実に恐ろしいよ、実際の話――身体中がたがた震えだすし、めちゃくちゃ寒気がして、身体も弱っちゃったみたいだった。歯はがたがた言うし、息はぜいぜいする。妻が私をベッドに連れて行ってくれたおかげで、何とかその晩は寝ることができた。

 火曜日の朝、起きたらもう死にそうな気分だったんで、会社に休みの電話を入れた。左足がとんでもなく痛むし、すこしむくんできたみたいだった。その脚は子供のときにひどい怪我をして、それ以来よくこんな風になる。おそらく前の日にオヘア空港のターミナルからターミナルへすごい勢いで走ったのも事を悪くしたんだろう。あるいは、インフルエンザのおかげでこうなっちゃったのかもしれない。どっちにせよ、当面の目的はインフルエンザを追い出すことだったので、私は一日中まずい薬を飲み続けていたよ。

 水曜日の朝起きたときには、気分は上々だった――インフルエンザの症状はどこかにいってしまったらしい。しかし脚とつま先が大きく赤く腫れ上がってしまって、ほとんど歩くこともできなかった。私はそれを妻に見せて、医者の予約を入れてくれるよう頼んだ。彼女はそれに従ってくれて、救急病院へ連れて行ってくれた。

 話をかいつまむと、連れて行かれた救急病院にたっぷり4日間もいる羽目になったよ(NCAAのトーナメントがあったことは神に感謝!)。血栓やら糖尿やら心臓疾患やらの検査をしたけど、ここまで悪くなったのは組織の感染症――フレグモーネ――が原因で、その理由が子供の頃の怪我のダメージのせいだって言うんだ。24年も前の、後遺症も何もまったく無い怪我がこんな時期にこんなことになるなんて思いつくだろうか。無理な話だ。

 とにかく、大量の休息と馬鹿馬鹿しい量の抗生物質のおかげで、引きずる脚とポケットにいっぱいの薬と共に会社に戻ってきたってわけさ。ひどい一週間だったね。え、こんなことを長々書いた理由? 同情して欲しいのかって? 違うね……ただで手に入る話題は重要なのさ。毎週数千文字を埋めるって作業は楽じゃないんだよ!

ドラフト会議

 さて、その休みをもらった週のテーマはドラフトだったわけだけど、本当はそこにぴったりの題材があったんだ。ありがたいことに今回はテーマが何も無いので、何でも好きなことが書けるらしい。ってことは、先週の話でもいいわけだ。

 ドラフトがテーマのときの私のコラムの内容が、調整とドラフトとの関係になるなんてことは無い――ドラフトであるが故の何たるかが問題になることは無いから、コラムにする内容があまりない。代わりに、私は実に面白い新たなドラフトのやりかたを紹介しようと思う。こいつは会社で覚えたんだけど、考え出したのは誰あろうリチャード・ガーフィールド(※マジックの生みの親)その人だ。

 しかし、まずは開発部とドラフトの係わり合いについて……。

調整担当のピック

・ドラフトの“自己調整機能”は、すなわち我々が特に環境のバランスを取ることに躍起にならなくていいことを示している。ある色が他の色より強ければ(ウルザズ・サーガの黒とか)、より多くのプレイヤーがそのカードをピックするわけで、その分強さのレベルも分散し、技術が成功への要素となってくるんだ。代わりに、調整ではシールド・デッキをより多くプレイする。こちらでは色のバランス問題がより目立つし、大きなインパクトを与えるからだ。
・我々がドラフトのテストをするのは調整の最後の方で、その目的はシールドでは起こりえない戦略を探し(“ずべらデッキ”とか)、それが不必要に強すぎないかを確認するためだ。
・組織化プレイ部は最近になって、今後は個人によるロチェスター・ドラフトをPTQやプロツアーや、その他のレベルの高いイベントでは採用しないことに決めた。プレイヤーが遊びでこのフォーマットをやることはない(時間がかかるし、容赦が無い――君の失敗はテーブルの全員にバレバレになってしまう)し、レベルが上がれば先が見えてしまうからだ。カードの評価の技術は上がっているから(インターネットとMagic Onlineのおかげだ)、どのカードがどこでピックされるかは容易に予想ができてしまう――すべての情報が公開になっていると、それほど多くの決断はされなくなってしまうものだ。なので、我々は実証済みのブースター・ドラフトを、しばらくは使うことに決めたんだ。

ウィンストン・ドラフト

 マジックのゲームとしての素晴らしさは、その手早さと手軽さにある。2人のプレイヤーがデッキを持ち寄ればゲームができるんだ。構築は2人でもうまくいくし、シールドデッキも2人でも問題ないけど、ドラフトは人数がそろわないと楽しめない。

 君が数ある一対一のドラフトのフォーマット(ブースター、ソロモン、ロチェスター)を一度でも試したことがあるなら、すぐにこのドラフトのノウハウは4人なり8人なりのドラフトとはまったく違うことに気づくだろう。一対一のドラフトの目的は、いつもの最強のデッキを作るということではなく、相手がどのカードを取ったかを覚えて、その情報をカードのカットやマナ基盤の妨害に用いることだ。

 この手のゲームは楽しくない。なので、私はいつでももうちょっとランダム性のある面白い一対一のドラフトのフォーマットを探していた。ありがたくもこれを教えてくれたのは、開発部副部長のビル・ローズだ。

 それが“ウィンストン・ドラフト”で、考えたのはリチャード・ガーフィールドだ。リチャードも私と同様、もうすこし運の要素の入った一対一のフォーマットを探していた。以下がそのルールだ。

1. 各プレイヤーは、45枚分のリミテッド用のカードを用意する(ブースター3つか、トーナメントパックから土地を抜いたもの)。

2. 90枚のカードのたばを、中を見ないで一まとめにしてシャフルし、1つの大きな山札を作る。

3. どちらが先にピックするかを決め、山札の一番上から3枚のカードを(1枚ずつ)裏向きに並べ、3つのカード置き場にする。

4. 先攻のプレイヤーは一番目のカード置き場のカードを見る。それをピックしてもいいし、しなくてもいい。

5. ピックしたら、そこに山札の一番上から1枚のカードを、裏向きにカードのあった場所に置く。

6. ピックしない場合、そのカードを戻し、新たなカードを1枚裏向きにその上に重ね、二番目のカードを置き場のカードを見る。

7. そのカードを見てピックするかどうかを決め、ピックする場合は空いた場所に新たなカードを置き、ピックしない場合は新たなカードを追加して次に進む。

8. 三番目のカード置き場のカードも気に入らなければ、そこに1枚カードを足し、山札の一番上のカードを1枚ピックする。

9. これを、90枚のカードが全部ピックされるまで繰り返す。お互いはピックしたカードに基本地形カードを組み合わせて40枚デッキを構築し、対戦する。

 このフォーマットの素晴らしさは、君は相手のカードの情報を半分ほどしか持っていないことだ。残していったカードから(基本的には)色を推論することはできるだろうし、その情報を元にわざとカードを残して何枚か追加させる手もある。

 こいつはめちゃくちゃ面白いよ。私は兄弟のニールと一緒に、こないだの休暇の間ウィンストン・ドラフトを繰り返し続けて、ブースターを2ボックスも開けてしまったよ。パックのカードを全部見ても問題ない……単にランダムに90枚のカードを選んでシャフルしてはじめたってかまわない。

ドラフトの一例

 以下に私とニールとのウィンストン・ドラフトの例を示そう。今回のカードの中身は神河物語のトーナメントパック1つ(土地は除く)と神河謀叛のブースター3つだ。カードはきっちり90枚になる――完璧だね。

 コイン投げに勝った私が先攻だ。ニールは90枚のカードをシャフルし、上から3枚のカードを並べて置いた。

 私はカード置き場その1のカードを見た――《思考縛り/Thoughtbind》だ。いいカードじゃないね。次の方がいいだろう。これはピックしないことに決め、裏向きに戻し、山札から新たなカードを1枚重ねて置いた。次にカード置き場その2を見た――《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》だ。このおちびさんにノーを突きつけるのはさすがにつらいので、こいつが私の最初のピックになった(これは裏向きのまま私の前に置かれ、いつでも見てかまわない)。山札の上からカードを1枚取り、裏向きのままカード置き場その2に置き、ニールの番だ。

 彼は最初のカード置き場のカードを見る。カードは2枚ある――《思考縛り/Thoughtbind》と、何か私の知らないカードだ。彼は欲しくなかったようで、そこに新たな3枚目のカードを追加した。二つ目のカード置き場のカードもお気に召さなかったようで、ここにもカードを追加した。そして、3番目のカード置き場の何かのカードは実に欲しいものだったようで、彼はそれをピックして、新たな裏向きのカードを追加した。私の番だ。

 一つ目のカード置き場には3枚のカードがある――両方が知っている《思考縛り/Thoughtbind》と、この段階で両方が知ることになった《孤独の守護者/Guardian of Solitude》と、ニールがまだ見ていない《天羅至の掌握/Terashi's Grasp》だ。やっぱりこのカードはあまり欲しくないので、私は4枚目のカードを足した。カード置き場その2は《霧中の到達/Reach Through Mists》《蛇の皮/Serpent Skin》だった。こいつもいらない。私はクリーチャーと除去を最優先しているので、3枚目のカードを追加して次に行った。

 3つ目のカード置き場は、《滝の源獣/Genju of the Falls》1枚だけだ。これなら全然悪くない。私はしばらく考えてこれを取った。テーブルに残った青の穴埋め系のカードもこれで取れるだろう。私は三番目のカード置き場に新たなカードを置いた。

 この段階で、私は緑と青の強いカードを1枚ずつ手に入れた。どちらも強烈な爆弾級というわけではないが、そのままにはできない1枚だ。

 ドラフトが先に進み、私がカード置き場その1を取ったときには、中身は8枚に膨れ上がっていた(《思考縛り/Thoughtbind》《孤独の守護者/Guardian of Solitude》《天羅至の掌握/Terashi's Grasp》《オーラのとげ/Aura Barbs》《最後の河童の甲羅/Shell of the Last Kappa》《樹海の胴/Body of Jukai》《かまどの神/Hearth Kami》《摩滅/Wear Away》)。先にカード置き場を3つともパスして山札を引いたのはニールの方だった。数ピック後に、私は幸運にも《地揺すり/Earthshaker》《貪る憤怒/Devouring Rage》のおまけつき)を手に入れることができたので、赤に向かう方針に決めた。その数ラウンド後に、私は山札の一番上からカードを取ることにしたが、めでたく《肉体の奪取/Rend Flesh》が出てきた(他にも《鼠の墓荒らし/Nezumi Graverobber》をピックしていたので、黒をにらむことにした)。その後Okiba-Gang Shinobiと《鬼の下僕、墨目/Ink-Eyes, Servant of Oni》を立て続けに手に入れ、黒もかなりいける方向になった。

 私のデッキはこんな感じだ。

ウィンストン・ドラフト・デッキ
7 《森/Forest》
6 《山/Mountain》
5 《沼/Swamp》
18 土地

1 《凍らし/Frostling》
1 《花の神/Hana Kami》
1 《茨の子/Child of Thorns》
1 《かまどの神/Hearth Kami》
1 《燃えさし拳のずべら/Ember-Fist Zubera》
1 《松族の狙撃手/Matsu-Tribe Sniper》
1 《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》
1 《鼠の墓荒らし/Nezumi Graverobber》
1 《浪人の犬師/Ronin Houndmaster》
1 《真火の門番/Shinka Gatekeeper》
1 《残忍な詐欺師/Feral Deceiver》
2 《大牙の衆の忍び/Okiba-Gang Shinobi》
1 《地揺すり/Earthshaker》
1 《鱗の大男/Scaled Hulk》
1 《鬼の下僕、墨目/Ink-Eyes, Servant of Oni》
1 《樹海の胴/Body of Jukai》


17 クリーチャー

1 《斉射の口切り/First Volley》
1 《旅行者の凧/Journeyer's Kite》
1 《肉体の奪取/Rend Flesh》
1 《樹海の咆哮/Roar of Jukai》
1 《血の訴え/Call for Blood》
1 《貪る憤怒》


6 呪文

 実際は《地揺すり/Earthshaker》とのシナジーも多くないし、除去はきわめて乏しい。でもこれでやるしかないし、カードプールも狭いんだからこれ以上はどうなるかわからない。あとはプレイするだけだ……。

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