シャドウムーアが発売されるとともに、日本選手権の予選シーズンが始まり、まさにスタンダードシーズンとも言える時期になりました。
スタンダードといえば、その名が示すように、標準的に遊ばれているフォーマットではあるのですけれども、やはり、夏の日本選手権予選から日本選手権にむけてのこの時期は、スタンダードに関わる情報も増えることで、毎年もっとも面白くなる時期ではないでしょうか。
とくに、今シーズンは、予選シーズン中に行われるプロツアーハリウッドのフォーマットがスタンダードであることもあって、例年よりも、より面白く、またもりあがる環境になる事が予想されます。
そこで、みなさんに問いたいと思います。
「こんなに面白いことを、見過ごしてしまっていいんですか?」
そう、マジック:ザ・ギャザリングは、販売され続ける新セットと、メタゲームによって環境が変わり続けるゲームなのです。そして、その環境の変化自体を楽しめるゲームなのです。もちろん、ゲーム自体も楽しいものですが、その環境の変化自体を楽しめないようでは、もったいないのではないか、と、筆者こと川崎は考えるのです。
| メタゲームとは?
マジックにおいて、支配的なひとつの戦略があらわれたときに、その戦略に対して有効な戦略のデックを大会に持ち込む事自体が有効となることが数多くあります。
例えば、アーティファクトをメインとしたデックが環境で強力なデックとなった場合、アーティファクト対策を多く入れたデックが勝ちやすくなる事などが挙げられます。
さらに、そうなることを読み切って、あえてアーティファクトを使用しないデックを使用する事でそれらのデックに対してさらに有利に戦う事も可能となるのです。
このような、実際にプレイするゲームの外で行われる、「ゲーム以前のゲーム」の事を、マジックの産みの親であるリチャード・ガーフィールド博士は「メタゲーム」と名付けました。
これは、トーナメントでのマジックでのみの出来事ではなく、例えば、あなたのまわりで遊んでいるプレイヤーの多くが「赤単バーン」を使用していた場合、プロテクション赤や対象にならないクリーチャーをメインにしたデックを使用すれば有利に戦う事ができると思います。これも立派なメタゲームなのです。
ただ、この原稿では、便宜上、日本選手権予選を中心としたメタゲームについて語っていく事にしたいと考えています。 |
筆者こと川崎は、このメタゲーム自体をひとつの頭脳ゲームとしてウォッチングすることを楽しみとしています。ものすごく古い話ではあるのですが、例えば、2001年頃の《補充》デックを中心としたメタゲームの動きなんて、今思い出すだけでもワクワクするぐらい面白いものでした。
そこで、ぜひとも、この楽しいメタゲームウォッチングを多くの人にも楽しんでもらおうと思い、ここでメタゲームの解説のための記事を執筆することにした、というわけです。
ただ、この記事がメタゲームのためのメタゲームの記事になってしまっても非常に意味がないとも考えています。実際に、ゲームを行う上で有益な情報を提供するものとなるべきなのです。
そこで、今回は、実用的な視点で筆者をサポートしてもらうために、特別ゲストを招いて、対談形式で記事をすすめさせていただく事にしました。

そのゲストとは、2006年度Player of the Yearであり、独自の視点での構築に定評のあるデックビルダーでもある八十岡 翔太さんです。
八十岡さんのプレイヤーとしての視点と、僕、川崎のウォッチャーとしての視点の邂逅がどのような効果を生みだすかわかりませんし、そういう意味で非常に恐ろしい企画ではあるのですが、人間には怖いもの見たさって感情もあるじゃないですか?
というわけで、スタンダードを楽しんでいる人にも、メタゲームを楽しんでいる人にも楽しんで貰える記事になるといいな、とかいいながら、とにかくはじめてしまいましょう!
シャドウムーアの影響と頑強
川崎 「えっと、どこから話を始めようかっていう感じなんですけどね。まずは、シャドウムーア発売直後に八十岡さんに聞いた話から解説するべきかなと。たしか、シャドウムーアで環境を変えるキーとなるカードはなにか、みたいな質問をしましたよね。」
ちなみに、そのときの予想は、カード単体では《台所の嫌がらせ屋》の名前を挙げていました。そして、ダメージを受けないで色マナを安定させる事の可能になる《偶像の石塚》に代表されるフィルターランドと《反射池》の存在も含めて、環境はコントロールよりになるという予想でした。
川崎 「まぁ、正直な話、八十岡さんの予想は、いつもコントロールよりっていう答えなんでそういう意味ではあまりあてにならないんですけど、ただ、やっぱ、《台所の嫌がらせ屋》はかなり環境に影響を与えていますね。」
八十岡「《台所の嫌がらせ屋》だけじゃなくて、《残忍なレッドキャップ》の存在も影響が大きいと思う。この2枚の存在で地上はすぐ止まるようになったから。正直な話、地上クリーチャーで殴るビートダウンは相当厳しいね。単純に頑強っていう能力が「ただツヨ」すぎるんだよね。」
川崎 「シャドウムーアめったぎりの時に、浅原(晃)さんも言ってましたね。頑強が弱いわけないでしょ、どうみても、って。シャドウムーアのコントロール向けのカードといえば、《炎渦竜巻》もありますが…」
八十岡「カードは強いんだけどね…はいるデッキがないんじゃないかなぁ…いれるとしたら、赤緑ビッグマナ系だけど、赤緑ビッグマナは正直、あたって嬉しいデッキってあるの?って感じ。」
赤緑ビッグマナとは?
《根の壁》や《北方行》によってマナを加速し、《調和》で手札を充実させた上で、重量スペルのカードパワーで攻めるデックタイプ。
もともとは時のらせんブロック限定構築でのアーキタイプだったが、後にスタンダードでも使用されるようになり、昨年末のFinalsの頃にはメイン勢力のひとつとなっていた。基本的にビートダウンとの対戦を得意とする一方で、大振りなため、カウンター系のデックが苦手。 |
川崎 「あれ?もともと《硫黄破》もありますし、《炎渦竜巻》も考えたら、黒緑エルフとはかなり相性いいんじゃないですか?」
八十岡「だから、《台所の嫌がらせ屋》なんかの影響で黒緑エルフみたいな地上で殴るデッキは数が減るんだよね。《炎渦竜巻》でダメージうけないで盤面一掃できるのはいいけど、ソーサリータイミングだと、青黒フェアリーに対して厳しいし。」
川崎 「もともと相性のいいデックに対して、相性がよくなりすぎちゃって、逆に存在意義がなくなりつつある、ってかんじですか。」
八十岡「そういうこと。」
川崎 「ビッグマナといえば、赤緑以外のデックが増えてますよね。まぁ、青緑はどこかの王子(清水 直樹)に任せておくとして、黒緑がすごい増えてるように見えますよね。あと、面白い所では緑単もありますね。」
八十岡「黒緑ビッグマナっていうけど、どちらかというと黒緑コンだよね、あれ。あんまりビッグマナじゃないようには見えるよ。」
川崎 「そういえば、シャドウムーアで《堕落》がはいって、黒コン組めそうじゃないですか?似たようなカードを入れた《夜の群れの雄叫び》をつかった緑単ビッグマナがあるわけですし。」
八十岡「自分が黒コン好きなだけでしょ、それ。黒コンは厳しいと思うよ、《苦花》さわれないし。昔の《陰謀団の貴重品室》とか使うタイプの黒コンができるなら、可能性はあったと思うけどね。モーニングタイドが強すぎた一方でシャドウムーアのカードはどちらかというと、トロンがあった神河とかの時代にあったほうが強かったんじゃないかってカードが多いんだよね。」
トロンとは?
《ウルザの塔》《ウルザの魔力炉》《ウルザの鉱山》というそろえると3枚で7マナという圧倒的なマナを生みだす土地の総称。
また、これらの土地でマナが増える事を利用したデックタイプのことも、総じてトロン系のデックと呼ぶ。9版でこれらの土地が使用できなくなるまでスタンダードで圧倒的な地位を築いていた。 |
川崎 「なるほど、そういう意味で、シャドウムーアのカードパワーを活かすために緑のマナ加速と組み合わせたデックが登場してきたっていうのはあるかもしれませんね。」
八十岡「うん、ただ、まだモーニングタイドのカードパワーが高すぎて、扱いにくいシャドウムーアのカードが活かされるデックは環境に影響を与えてないね。」
川崎 「と、現在の環境の話になったところで、先日行われた日本選手権東京予選の結果をみてみましょう。」
東京1次予選結果と三大アーキタイプ
川崎 「えっとですね、この原稿に使う用の資料として、GP静岡二日目のメタゲームブレークダウンと、東京1次予選のメタゲームブレークダウンの結果を円グラフにしたものを用意したんですけど…」
八十岡「これ、必要ないでしょ。ほとんど変わってないよ。」
川崎 「そうなんですよね…細かい事をいうと、全体でのいわゆる三大アーキタイプ、緑黒エルフ・青黒フェアリー・ヒバリブリンク系の割合は減ってるんですけど…」
八十岡「それも当たり前でしょ。勝ってきたグランプリの二日目のメタゲームと、全員分の予選のメタゲームだったら、やっぱり後者の方がいろんなデッキ使ってる人が多いんだから。」
川崎 「ですよね。というわけで、ちょっとグラフとかでビジュアル的にメタゲームを解説しようって言う企画もあったんですけど、これは次回へのお楽しみという事でご勘弁いただこうかなと。」
八十岡「そのほうがいいよ。意味がなさすぎる。」
川崎 「で、突破したデックも結局その三大アーキタイプとその派生だったと。」
八十岡「ね、正直ちょっとつまらない。」
川崎 「今回、事前に行われた関東の草の根イベント(五竜杯とPWC)の主催者が尽力してくださったおかげで、新しいセットが発売された直後にもかかわらず情報がすごい多かったんですよね。で、僕もそのへん少しお手伝いさせてもらってたんですけど、直前の大会ではどちらも青黒フェアリーが優勝してましたね。」
 |
青黒フェアリー
東京1次予選4位 / クドウ アミル
|
 |
川崎 「今回権利をとったのは、いたって普通のGP静岡で優勝したのと同じタイプのフェアリーなんですけど、最近はやっているのは、どちらかというとタイブレークで権利を惜しくも逃してしまった5位の方の《その場しのぎの人形》のはいったタイプですね。」
 |
青黒マネキンフェアリー
東京1次予選5位 / アカイ サトシ
|
 |
川崎 「このフェアリーですけど、現状、もっともシャドウムーアからの影響が少ないデックタイプですね。」
八十岡「フェアリーは1ターン目に《祖先の幻視》を待機させたいから、フィルターランドすら使いにくいんだよね。」
川崎 「たしかに。でも、最近になってフェアリーを使ってる人自体は増えてなくても、上位の人が使ってる、つまり勝率の高いデックになったように感じるんですよね。」
八十岡「フェアリーが緑黒エルフに強く進化したっていうのも大きいはず。《その場しのぎの人形》型は《霧縛りの徒党》での勝ちパターンが増えたのも大きいけど、黒緑エルフに対する耐性があがったっていうのも大きいんじゃないかな。」
川崎 「というわけで、さっきから八十岡さんが酷評している緑黒エルフですけど、予選突破デックにもひとつありますね。」
 |
緑黒エルフ
東京1次予選1位 / オカダ ヒロミ
|
 |
八十岡「エルフ使ってる人には、正直、もう他のデッキ使ってくれって言いたいね。それぐらい黒緑エルフの時代は終わってると思う。」
川崎 「《台所の嫌がらせ屋》《残忍なレッドキャップ》の頑強に、《その場しのぎの人形》《叫び大口》の黄金コンビが環境に台頭してるせいで、地上戦線が完全に止まってしまう上に、《炎渦竜巻》という大量除去が増えましたからね。」
八十岡「その解説情報まったく増えてないよね。」
川崎 「これまでの話をまとめただけですから。一応、緑系のビートダウンとしては、頑強クリーチャーをメインにした白緑ビートダウンもちょっと話題になってますけど。」
八十岡「結局勝ち手段が地上クリーチャーな時点で黒緑エルフと同じようにダメなはずなんだよね。《不敬の命令》がないぶん、直接ダメージ手段がないから《神の怒り》とかの全体除去に弱くなってるんじゃない?そこの部分を頑強で補うっていう事なんだろうけど、所詮はクリーチャーだからなぁ…」
川崎 「ほんと、八十岡さんはクリーチャー嫌いですよね。そんなスペル好きの八十岡さんからみたら、環境で一番いいビートダウン系のデックは赤単バーンですかね?GP静岡前からじわじわ数増やしてて、最近では一層増えた気がしますけど。シャドウムーアで《炎の投げ槍》や《ぼろ布食いの偏執狂》みたいな新戦力を得た事ですし。」
八十岡「あぁ、増えてるね。ただ、フルバーンは好きだけど、今のバーンは好きじゃないなぁ…あれ、美しくないよ。バーンのふりした土地ビートダウンだしね。あと、赤単バーンは実はシャドウムーアで何も得られてないって思う。《苦花》がある環境で《ぼろ布食いの偏執狂》は何がしたいのかわからないし、《炎の投げ槍》も、弱いとは言わないけど今のバーンには必要ない気がする。」
川崎 「あぁ、確かに土地でビートするって言う事を考えれば、1枚で4点っていう部分よりも、マナコストの軽さの方が重要だったりしますしね。」
八十岡「ただ、バーンがシャドウムーアから何も得ていないかっていうと、そういうわけじゃなくて、むしろフィルターランドの恩恵を一番うけることになる可能性はあるね。今まで、事故とダメージランドのダメージが厳しくて単色だったけど、《火の灯る茂み》のおかげで、前みたいに《タルモゴイフ》のために緑をタッチしたら強い可能性がでてきた。」
川崎 「あぁ、なるほど。単色はともかく、多色化する余地がでてきたと。あと、権利を得たビートダウンといえば、昨年の世界王者デックでもある黒緑白ドランがありますね。」
 |
緑白黒ドラン
東京1次予選2位 / ホンナミ トモユキ
|
 |
八十岡「ドランも…結局地上で殴るって意味じゃあんまり変わらないんだけどね。ただ、エルフと違って、シャドウムーアで大幅にデッキパワーがあがったデッキだし、まだマシだと言えるね。」
川崎 「《神の怒り》はともかく、《炎渦竜巻》や《硫黄破》への耐性が高いですね。」
八十岡「《萎れ葉のしもべ》はカードパワーだけはすごい高いからね。ドラン以外では使えないけど。エルフだと、結局《傲慢な完全者》が脆いから全体火力にどうしても弱いけど、その辺をドランだと補えるからね。」
川崎 「さて、最後は青白ヒバリブリンクですか。」
 |
青白ヒバリブリンク
東京1次予選3位 / エビエ クニサト
|
 |
八十岡「ヒバリはね、完成しきってるデッキだから。今更変わる所はほとんどないよね、青白で組む場合は。」
川崎 「そうですね、青白だと、ですね。ただ、最近は、いわゆるジョイタイムっていうんですか、赤タッチで《大いなるガルガドン》いれたタイプのデックみたいに多色化したヒバリが増えてるように感じるんですけど。」
八十岡「やっぱ、シャドウムーアの影響は大きいでしょ。《秘教の門》のおかげで色マナ安定してタッチする余裕が増えたから。あと、《大いなるガルガドン》自体がすごい強い。ヒバリ同型だと《大いなるガルガドン》を待機した方が勝つ、ガルガドンゲーっていっていいくらい。」
川崎 「やはり、ヒバリがメタゲームの中心なのは間違いないですか。」
八十岡「結局、ヒバリが強すぎて、そのせいで他のデッキがあまり存在意義がなくなってるっていうのがあるね。で、そのヒバリに対して、勝率がよくて他にも勝てるフェアリーだけが勝率を上げてるっていう。ヒバリはソーラーフレアと同じで、プレイングを間違えにくいっていうのもメリットだね。」
川崎 「なるほど。かなり長くなってきたので、ここでまとめると、まず、現在のメタゲームはGP静岡のメタゲームに準拠して動いていると。ただ、シャドウムーアのカードがまったく関係ないわけじゃなくて、理由として一番大きいのは、完成されたデックが、シャドウムーアの、主にフィルターランドによって安定性を高めて勝率を上げたからだと、そういう事ですね。」
八十岡「そうだね。安定性って言うのが大きい。シャドウムーアから新しいデッキがでてきてないわけじゃないんだけど、すごい調整が難しいデッキなんだよね。ある程度完成したデッキリストっていうのがまだでてきてないから、結果残せてないんじゃないかな。」
川崎 「環境の初期にはよくある事ですね。」
八十岡「あと、今の環境の特徴として、コンボとパーミッションがまったくいない珍しい環境だっていうのがあるね。
パーミッションとは?
《取り消し》に代表される打ち消し呪文を中心としたデッキ。その性質上、青を中心として構築される。
いわゆるコントロールデッキが《神の怒り》に代表されるようなパーマネント除去を中心とし、ビートダウンのようなパーマネントで攻めるデッキに強いのに対して、パーミッションは、呪文を中心とした、コントロールデッキやコンボデッキに強い構成となっている。逆に、パーミッションはマナを残しながら動くことと、打ち消し呪文のマナコストの関係から、軽いマナで大量展開するようなビートダウンを苦手とする。
ビートダウンに強いコントロールデッキ、コントロールに強いパーミッション、パーミッションに強いビートダウンというように三角形を描くのがメタゲームの基本とされているため、それを逸脱している環境は珍しいと八十岡は指摘している。 |
川崎 「パーミッションの化身とまでいわれた八十岡さんとしてはゆゆしき自体ですね。ただ、コンボデックは全然ないわけじゃないですよね…という流れで、プロツアー前にちょっとシャドウムーア発のデックについて触れておきましょうか。」
シャドウムーアの生みだした2つのコンボ
川崎 「先ほどコンボデッキがないって話になったんですけど、シャドウムーアで登場したデックとして注目されているのって全部コンボですよね。」
八十岡「まぁ、最初は普通コンボで強そうなカードにみんな飛びつくから、っていうのもあるんじゃない?」
川崎 「そうですね。《目覚ましヒバリ》も最初は無限コンボのパーツ(《影武者》と《鏡の精体》によって無限に《目覚ましヒバリ》の効果を使い回す事が可能になる)として注目されてましたもんね。結局、無限コンボはオーバーキル気味で、《目覚ましヒバリ》自体が十二分に強いって話になって減ってきましたけど。それはさておいて、シャドウムーア発のコンボデック。今のところあまり結果を残していませんね。」
八十岡「やっぱ、ゼロからデッキをつくるのって大変だから。さっきもちょっと言ったけど、どっちも色マナのバランスの調整とかが相当難しいからデッキの完成形までいっていないんじゃないかな。ある程度完成したデッキリストが出回れば数は増えるかもしれないね。」
川崎 「プロツアーハリウッドの結果次第では…って事ですか。海外からも完成形といえるデックリストがあまりでてきてない事を考えると、プロツアー前であちらのプロも情報を押さえてる可能性が高いですね。と、まぁ、そんな話してても、解説できないですし、予備知識程度になっちゃう可能性は高いですけど、実際にそれらのコンボデックを紹介しましょうか。」
 |
無限頑強
東京1次予選 / タナカ ヒサヤ
|
 |
川崎 「まずは、東京1次でもそれなりに活躍していた無限頑強デックから。《柏槙教団のレインジャー》がでていると、場に出たクリーチャーに+1/+1カウンターを載せられるので、頑強クリーチャーが戻ってきたときの-1/-1カウンターと相殺させて、場に出たときの能力を無限に使い回そう、っていうデックですね。」
八十岡「このデッキ、コンセプト自体はすごい強いんだよね。プロジェクトXみたいなものだから。普通にクリーチャーでビートダウンして、相手のリアクションを誘って、そのリアクションの隙を利用してコンボを決められるっていうコンセプトは、できるなら最強に近い理論ではあるね。」
川崎 「俗に言うクロック-コンボですね。やっぱ、勝ち手段の依存度が広いデックの方がうまく構築できれば強いって事ですかね。」
八十岡「リアクションされないときは、そのまま殴り勝てるからね。ただ、土地の調整がものすごい難しいんだよね、このデッキ。パーツも色々選べるって言うのはメリットだけど、逆にそのせいで完成形がわからなくなっているっていうのもあるだろうし。」
川崎 「このデックを使用していた(田中)久也さんも言ってましたね、マナベースが難しいって。ただ、単品のカードパワーが非常に高いので注目したいデックではありますね。」
八十岡「色増やしたりと選択肢も多いし、何かしらのバージョンはハリウッドででてくるはずだから期待したいね。特に、何回も言ってるけど、コンボパーツである《台所の嫌がらせ屋》と《残忍なレッドキャップ》は地上ビートをシャットダウンできるくらいに強いカードだからね。ただ、それだけに、そのメリットを殺すダメージランドとか、タップインの鮮烈土地とかに頼らなきゃいけないのが…」
川崎 「そのへんの答え合わせというか、解答はハリウッドでのデックリストに期待しましょう!って感じでまとめておきますか。続いて、もうひとつのシャドウムーア発のコンボデックなんですけど…こちらは実は東京1次でめぼしいデックリストが存在しなかったんですよね…その前の草の根大会ではちらほらと見かけたんですけど…」
八十岡「こっちは無限頑強以上に作るの難しいからね。」
川崎 「というわけで、八十岡さんにサンプルデックを作ってもらってみました。」
 |
白鳥アサルト
サンプルデック
|
 |
川崎 「《ブリン・アーゴルの白鳥》と《突撃の地鳴り》のコンボデックですね。動きとしては、《突撃の地鳴り》を張って、手札の土地を2点火力として《ブリン・アーゴルの白鳥》に打ち込むと、その能力でドローに置換される。で、その置換されたドローをさらに《ダクムーアの回収場》で発掘に置換すれば、半永久的に土地を手札にキープできるので、あまった分の土地で対戦相手のライフを削るというデックですね。動き自体は相当面白いと、思うんですけどね。」
八十岡「正直、このレシピも勝てるレベルかっていうと怪しい。《突撃の地鳴り》がトリプルシンボルなせいでマナベースが難しいっていう弱点もあるけど、その辺は《偶像の石塚》でなんとかできないことはないんだよね。ただ、構造として致命的な欠点があるんだよね。それは、コンボパーツが単体で弱すぎるってこと。」
川崎 「無限頑強の逆ですね。こっちのコンボパーツとして一番強い《ブリン・アーゴルの白鳥》と、無限頑強で一番弱いパーツの《柏槙教団のレインジャー》を比べてみても、《柏槙教団のレインジャー》の方が強かったりしますからね。」
八十岡「無限頑強みたいに能動的に動ければ隙を作らせたりできるし、別の勝ち手段模索したりできるんだけど、白鳥デッキの場合は、それがほとんど不可能だしね。なにかしら別の勝ち手段用意してプレッシャーかけられる構成にしないと、厳しいね。」
川崎 「浅原さんもそんな事言ってましたね、白鳥は別の勝ち手段があるデッキに補助的に入れられるなら強いデックになる可能性あるけど、そうじゃなかったら相当厳しいって。じゃあ、このサンプルデックがサイドチェンジでドラゴンストームデックになるのも、そういう意味でのサイドボードチョイスなんですか?」
八十岡「相当悪あがきだけどね。何抜いたらいいかわからない所もあったりで不完全だしね。正直もっと他の方法探してもいいかなとは思う。一応、メインは大体完成で、勝てるデッキにはこれで勝てると思うよ。ただ、フェアリーみたいに勝てない相手のために何かしら戦略を増やすオプションをサイドボードに用意する必要があると思うんだよね。」
川崎 「ハリウッドで上位にいるかどうかはわかりませんけど、目新しいアーキタイプなんできっと紹介されるでしょうし、そのへんにどういうテクニックが使われてるかは要注目ですね。あと、個人的に気になったデックなんですけど…」
八十岡「青黒リアニ?」
川崎 「そうですね。」
八十岡「好きそうだもんね、ああいうの。ただ、今って青白ヒバリが多いせいで環境にバウンスが多いっていう致命的な弱点があるから、リアニっていうコンセプト自体が厳しいと思うよ。例えば、最速で2ターン目とか3ターン目にリアニできたとしても、結局《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》や《造物の学者、ヴェンセール》が間に合っちゃうからね。The
Finalsでリアニが優勝できたのも、モーニングタイド発売前のメタゲームだったからっていうのが大きい。」
リアニ(リアニメイト)とは?
マナコストの高いクリーチャーを、《マーフォークの物あさり》の能力などを使用して墓地に送り込み、黒の《ゾンビ化》などの墓地から釣り上げるスペル(リアニメイトスペル)を使用してマナコストを踏み倒し一気に盤面を掌握する戦術の事。
釣り上げるクリーチャーには、除去されにくく攻防に活躍する《怒りの天使アクローマ》や場に出たときの効果が絶大な《ボガーダンのヘルカイト》などが使用される。
The Finals07で藤田 修が使用し、みごと優勝を成し遂げた。
また、The Finals07では、他に墓地に一気にカードを送り込む《心の傷跡》を使用したバージョンが話題を集めている。 |
川崎 「大型クリーチャーで対応を間に合わせないって言うのが持ち味なのに、間に合っちゃう環境ですからね…ただ、爆発力はやっぱ捨てがたいですね。特に、東京1次予選ででてきたバージョンはかなり面白い動きしますからね。青の1マナクリーチャーを展開して、《記憶の放流》の共謀を活かすっていうのはかなり予想外でしたね。言われてみると、このデックでも使用されてる《溺れさせる者の信徒》みたいに、今回、青系でライブラリー削るカード増えてるんですよね。」
八十岡「ライブラリーアウトデッキ作るほどじゃないけど、自分のライブラリーを削る分には十分かもね。同じ《ナルコメーバ》《黄泉からの橋》を使ったデッキでも、《心の傷跡》デッキが一発決めるコンボだとしたら、こっちはシナジーをメインにしてる感じはあるよね。まぁ、結局《黄泉からの橋》をどれだけおとせるか、っていうゲームになるとは思うけど。」
川崎 「今まで無駄だった引いて来ちゃった《ナルコメーバ》を、《戦慄の復活》のフラッシュバックコスト以外でも活用できるあたりとか、相当面白いので、結構期待してはいるんですけどね…一応最速が2ターンと《心の傷跡》よりも早いですし。」
なお、最速の手順は以下の通り。
1ターン目と2ターン目に《エピティアの賢者》や《溺れさせる者の信徒》といった青の1マナクリーチャーを展開し、残った1マナで《記憶の放流》を共謀しながら、自分のライブラリーに使用する。
ここで、削られた8枚の中に、《ナルコメーバ》《戦慄の復活》と、さらに釣り上げるクリーチャー(《怒りの天使アクローマ》など)がいれば、2ターン目にリアニメイト完了である。さらに、《黄泉からの橋》があれば3体のゾンビトークンが生まれる。
これに対して、《心の傷跡》デックの場合は、2ターン目に《献身のドルイド》によってマナ加速した場合の3ターン目の《心の傷跡》からの展開が現実的なレベルでの最速の展開となる。
八十岡「まぁ、リアニも含めてなんだけど、コンボは増えてほしいよね。」
川崎 「パーミッション好きの八十岡さんとしては、やっぱ得意な相手が多い環境がいいですか。」
八十岡「やっぱ、環境いびつな気がするからね。パーミッションの部分を担当してるのがフェアリーだから、いわゆる普通のパーミッションがいないでしょ。ちょっと作りようがないんだけどね、パーミッション。どうかな…作れないかなぁ。」
川崎 「プロツアーはパーミッションの予定なんですか?頑なに。」
八十岡「ぶっちゃけ、プロツアーだと、ビートダウンが多い傾向があるから、パーミッションは相当きびしいんだよね。でも、どうだろう…つくれるとしたらパーミッションありな気がするし、パーミッションででたいかな。」
川崎 「あとは、まだでてきてないシャドウムーア関係だと…東京1次にはまったくいないですけど、《マナの反射》が個人的に気になってるんですよね…ちょっとこのあいだビッグマナよりもマナがでるメガマナっていうコンセプトのデック作ってみたんですけど、世間の評価より全然強いカードなんじゃないかって感じてますよ。フィルターランドと組み合わせると異常なマナでますし(生みだすマナの量を2倍にするため、フィルターランドからは4マナ生みだされる)」
八十岡「なし、ではないね。」
川崎 「予想外の反応ですね。結局これもバウンスに弱そうなんで、一刀両断される覚悟で名前だしたんですけど。実際、作ったデックも動きはすごい面白いけど、ムラがかなりあって厳しかったですし。」
八十岡「カード自体は強い、としか言えないかな。うまく作ればワンチャンスあるとは思う。」
川崎 「まぁ、そのへんも含めてハリウッド楽しみですね、って感じのまとめでいいですかね。」
八十岡「そんなもんじゃない?」
というわけで、どうだったでしょうか、今回のスタンダードウォッチング。 これだけ読めばスタンダード環境は完璧にマスター、とまではいかなくとも、理解の助け程度にはなったのではないでしょうか? とはいえ、今回語ったのは、日本国内、しかも関東に一部である東京1次予選がメインの内容。今週末には世界中のプレイヤーの機知の集合とも言えるプロツアーハリウッドがあります。 果たして未知のデックが生まれるのか?それとも機知のデックばかりなのか? 今回の記事の内容を踏まえて、皆様も「ウォッチ」を楽しんでいただければ幸いです。 第2回はハリウッド後の更新を予定しております。ぜひともお楽しみに。
川崎 大輔(かわさき・だいすけ)
マジック観戦記事「イベント・カバレージ」の分野で日本を代表するライター。
そのリズミカルな文章には定評があり、世界選手権から草の根の大会まで、書きに書きまくっている「神出鬼没のストーリーテラー」。
「デュエルすることと物語をつむぐことは同じこと」という信念のもと、語り継がれるべき試合を求めてトーナメント会場を渡り歩いている。
八十岡 翔太(やそおか しょうた)
斎藤 友晴・鍛冶 友浩とのチーム「Kajiharu 80」でプロツアーチャールストンを優勝すると、シーズンのほぼすべてのプレミアイベントでマネーフィニッシュを果たすという驚異的なアベレージの高さを活かして、みごと2006年のPlayer
of the Yearに輝いた。
また、パーミッション系のデッキ構築能力には定評があり、「ヤソコン」というブランド名とともに、特に環境初期には多くのトッププレイヤーがその構築能力に信頼をよせている。
多くのルールでのその傍若無人なまでの強さから、人々には「鬼神」として畏れ敬われている。
HOME
 |
|