《世界粛清》というカードを見て、誰もがまず「重い」と思うかもしれない。

 が、僕は意外とそうは思わない。もちろん、カジュアルで「はっはっは、パーマネントがゴミのようだ」と言いながら打つ訳ではない。まあ、打ちたい気持ちはあるが、ともかくここではトーナメント構築での話だ。

彼はこうも言っていた。
《不実》がカードとは気づけなかった」
 マジックのカードは2つに分けられる。それは、重いカードと軽いカードだ。かつての僕のチームメイトのひとり(そのプレイヤーは筆者よりも強かった)はこう言っている。

 真っ当な構築戦において5マナ以上のカードはカードではないと。  どんなに強そうに見えるカードでも5マナ以上はマナ事故の原因であり、実際に有効に使えるケースは少ないというのを語ってくれた。これは最終的には5マナ以上のカード(正当なマナを払ってプレイするカード)が多く入っているデッキはデッキとしてすでに失敗しているという理論に帰結する。

 その意見に僕は半分賛成で半分反対だ。ただ当時の情勢(テンペストブロック〜ウルザブロックくらい)を見れば殆どの場合、これは正しいことだった。

 特に打ち消し呪文の全盛期で、《対抗呪文》が存在していたし《マナ漏出》もあった。極端な例を挙げれば、《甲鱗のワーム》を召喚して、はいそれ《対抗呪文》となれば8マナの呪文が2マナで対処されたことになる。これなら《灰色熊》を召喚した方がいくらかマシだ。重いカードであればあるほど対処された時のリスクは大きいというのは周知の事実だろう。

重いカードを「粛清」していた一枚

 それが大きく変わったのは、8版において《対抗呪文》が収録されずスタンダード落ちしてからだ。確かにオンスロートブロック構築などのように、限定構築レベルのカードプールの場合、環境にこれといった打ち消し呪文がないときに、場に出た際の制圧力が異常だった《怒りの天使アクローマ》などが使われるケースはあったがそれは特殊な例で、常に構築戦では打ち消し呪文の影の前に高コストの呪文は表に出ることが殆どなかった。

 盟主《対抗呪文》を失ったことで、打ち消し呪文を多く積んだフルパーミッションデッキなどは、存在するのがそれまでよりもずっと困難になった。それから今に至るまで、重いカードは気軽に使えるものではないものの、その重さだけで使えないカードの烙印を押されることは少なくなり、現在ではどちらかと言えばコストに見合った効果があるかどうかが重視されるようになっていると思う。

 そこで《世界粛清》の登場だ。

 確かにこの呪文は8マナと重い部類に入る。ただマナシンボルは混成マナであり、実際は青か白を使っているデッキならば採用することが可能なので、単色のカードよりも使える幅は広い。

 後はこの効果で何が出来るか、そして、それがマナコストに見合っているかという部分が焦点になるだろう。

 《世界粛清》の効果はリセット呪文の部類に入る。しかも、その中でも最上級である全てのパーマネントに対応した数少ないリセット呪文だ。過去に遡れば、《激動》《星の揺らぎ》などがその類に挙げられる。

 しかも、《世界粛清》はパーマネントを手札に戻すだけではない。

 その効果はマナプール、そして、手札の枚数にまで及ぶ。ライフを例外とするなら、目に見える部分を全くの仕切り直し状態にしてしまうのだ。ただ、これは《激動》から《サイカトグ》といったように、マナプールにマナを浮かしておくことで可能だったコンボが事実上不可能になったことも意味する。まさに「目に見える部分」では完全なリセット状態という訳だ。マナプールにまで干渉するリセット呪文は類を見ない。

 この見た目完全なリセット状態から逃れるにはいくつかの工夫が必要になる。モーニングタイドで手に入れた場から離れた効果を利用する方法や、別次元のカードである待機カードを使うなどだ。前者は《目覚ましヒバリ》などでもうおなじみだと思うし、後者は《大いなるガルガドン》などが使えるだろう。実際にデッキを作る際には、こういったコンボ要素が意識されるのは間違いない。

 ただ勘違いしてはいけないのは、このような組み合わせはあくまで副産物だということだ。リセット呪文の強さはそのリセットの力で証明されなければいけない。《神の怒り》が強いのは《目覚ましヒバリ》と相性がいいからではなく、《神の怒り》そのものがリセット呪文として優秀だからだ。

 《激動》にしても《サイカトグ》と相性がいいというのは確かだが、《激動》のリセット力が余りにも強すぎたというのが根本的な使われた理由だろう。そもそも、《サイカトグ》《激動》が無くとも十分に試合に勝てるだけの能力を発揮する。《激動》《サイカトグ》も単体で強いからこそ、最強の組み合わせになったと言えるのだ。

 リセット呪文としての《世界粛清》は全てのパーマネントに対処できるが、マナを浮かすことはできない。その点で一方的な優位を築くことはできないのが大きな欠点のように映る。

 が、実はそれはそれで悪くはない。瞬速を持ったクリーチャーが跳梁跋扈する今の環境でマナが浮かせられないことは相手にとってもマイナス要因になるからだ。打ち消し呪文でない対策を抱えたデッキに対してはマナを空にするのは利点になるだろう。

 そして、もし、リセットによって擬似的なデュエルのスタートラインに立った場合、優位なのは先攻を取れる《世界粛清》をキャストした側だ。

 なぜなら、ある程度手札調整ができ、理想的に近い手札を選べるため、手札の質にバラつきがある本当のゲームのスタートと違うということが言えるからだ。後攻の理であるファーストドローは、お互いの展開が思わしくない場合に生きることが多い。手札の良い状態では基本的にテンポ勝負になり、そうなれば先攻の方が圧倒的に有利なのだ。

 あらゆる状況に対応できるリセット呪文はそれだけで強い。それが勝ちに繋がればなおさらだろう。《世界粛清》がマナコストに割の合った呪文かは正直なところ計りかねる部分も多い。ただ、単純に重いからという理由で切り捨てられる呪文ではない。

 今回紹介するレシピは敢えて青を使わないことにした。混成マナをよりよく利用するにはこういった手法も重要になってくるだろう。このデッキでは《大いなるガルガドン》の待機や《目覚ましヒバリ》と組み合わせて《世界粛清》を使えれば、勝利はほぼ手中に収まるはずだ。そうでなくとも単純に各種マナ加速、秘匿ランドである《風立ての高地》からキャストすれだけでも、それだけで有利に試合を運べるだろう。

世界粛清-サブプライムローン


4《風立ての高地》
3《変わり谷》
4《反射池》
4《戦場の鍛冶場》
5《山》
3《平地》
-土地(23)-

4《モグの戦争司令官》
4《なだれ乗り》
4《残忍なレッドキャップ》
4《包囲攻撃の司令官》
4《目覚ましヒバリ》
4《大いなるガルガドン》


-クリーチャー(24)-
4《世界粛清》
4《精神石》
4《連合の秘宝》
-呪文(12)-

 マジックは長い歴史ではぐくまれてきたいくつものセオリーがある。だが、「重いカードは使えない」などといったセオリーにとらわれすぎても、新しい価値を見逃してしまう可能性もある。

 カード名は《世界粛清》だが、もしかしたら、このカードが新しい世界を切り開く可能性もあるのだ。

 明日は、ついにシャドウムーアの発売日だ。そして、シャドウムーアには既存のマジックでははかりきれない斬新なカードがいくつもある。

 読者のみなさんにも、ぜひ新しい歴史を切り開いていってほしい。


浅原 晃(あさはら・あきら)

 マジックの歴史と伝統を愛するデッキビルダー。いまや日本における構築フォーマットの権威のひとりと言うべき存在で、各種媒体に独特のセンスあふれる浅原語録を披露している。

 2005年度世界選手権横浜大会ではメタゲーム外の存在と言われていた「歴伝」デッキをプレイして見事にベスト4に入賞。グランプリ優勝、The Finalsの連覇といった輝かしい業績の数々で知られてもいる。

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